2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧
第80話 焚き火の燃える枯れ木がパチリと音を立てて崩れる音に覚醒する。 どうやらルピナスは瞬間的にではあるが眠りというものに落ちていたらしい… 現実の体では、あり得ない事だ。 隣では、ルピナスに背を凭れスピスピと寝息をたてているカドデがいる。 「…
第79話 都市へ戻るべく歩いて、半刻ほど過ぎ… 陽も地平へ沈もうという時刻だ。 このまま急ぎ足で閉門間近の街門へ滑り込もうかとも思ったが… ルピナスが持ち合わせている所持金は宿屋に泊まるほどの持ち合わせも無く、今後のことを考えれば節約もしたい。 大…
第78話 2人の姿が地平から消えたのを確認して、ルピナスは背を翻す。 とりあえず、都市へ戻りもう少しだけ情報収集をしようと思った。 また、王都へ向かうにも旅券や旅道具が必要だ。 多少食わずとも、王都までたどり着く事は可能だとは思ったが… 衛兵に疑わ…
第77話 「リーサ、準備はいいか?」 「…うん…」 東の空がやっと白み始めた早朝。 辺りはまだ、夜の気配を残し寒々としているが 天上は雲ひとつない晴天が広がる。 ここから、丸一日近く歩き倒すには良い天候だが… リーサはやはり、曇天のような表情だった。 …
第76話 リージの問い掛けに暫く沈黙していたルピナスだったが… 「問題は無い。必要なら都市で冒険者登録でもして稼ぐとしよう」 ルピナスとしては、かなり珍しい軽い冗談のつもりだったが… 「ルピナスさん冒険者になるの⁈」 焚火の前でうとうとしかけていた…
第75話 所持金無し食料無しの旅人など…普通あり得ないだろう。 本体のルピナスの体はいくら食事しなくてもいいとして… この世界では、ルピナスも1人の人間として存在を書き換えられる。 では、この世界で死を迎えたらどうなるか? カドデプログラムの住人と…
第74話 「今夜は良くても、村に着くまでは気を抜くな…」 ぽつりと、焚火を前にルピナスが2人に囁く。 ルピナスから他者へ気遣う言葉など…滅多になかった。 リーサもリージも一瞬キョトンとした後… 柔らかい笑顔で頷く。 それから… 何だかんだと面倒見の良い…
第73話 帰りの道のりは行きよりも距離が短く感じられた。 2人の姉弟は、こんな長距離を今まで歩いた事がなかった。 父ら自衛団に同行して山道を散策した時でさえ、朝行って夜には帰宅だった。 今回の旅路は(旅としては、ごく小規模だが)2人にとって、忘れら…
第72話 酒場の外へ出た一行を出迎えたのは… 日が傾き、街中を金色に染めていた夕日だった。 「もう日が落ちるのかぁ…なんだかあっという間…」 今日、午前中に街へ入ってから数時間… 2人には、あっという間であり、様々なカルチャーショックを詰め込んだ長き…
第71話 「ん〜〜!!美味しい!!」 リーサが唸りながら顔をくしゃくしゃにする。 「この、南方野菜…食感がプチプチするよ! 果実のドレッシングも甘酸っぱくて合う!」 「鴨肉も柔らかいね。まるで…本で読んだ宮廷料理みたいだ…」 リーサとリージが感動で騒…
第70話 「うわぁ〜!これが都会のご飯かぁぁ」 給仕が運んできた何品かの料理にリーサは目を輝かせた。 「り、リーサ!恥ずかしい…」 リージは、そんなリーサの田舎者丸出しの発言に頬を染めるが、リーサは感動を隠そうとしない。 鴨肉の薄切りロース、南方…
第69話 「感謝します、ルピナスさん。 リーサと2人では少々野宿時の戦力に不安があったので…」 遠慮がちなリージのセリフと、満面の笑顔の反比例にリーサはクスリと笑う。 別れが数時間先延ばしになっただけ、だったが… それでもルピナスとの思い出が増える…