【KADODE】77話 「リーサ、準備はいいか?」
第77話
「リーサ、準備はいいか?」
「…うん…」
東の空がやっと白み始めた早朝。
辺りはまだ、夜の気配を残し寒々としているが
天上は雲ひとつない晴天が広がる。
ここから、丸一日近く歩き倒すには良い天候だが…
リーサはやはり、曇天のような表情だった。
「ほら、ルピナスさんに挨拶して…
出立するぞ!」
中々ルピナスの前から動こうとしないリーサだ。
ついには、鼻声になる。
「…うぅ…ルピナスさん…」
「道中気を付けろ。」
「うん…」
2人には見えないカドデもルピナスの背に隠れながら涙目だ。
「ルピナスさん…手紙…書いてね。
村の住所…メモしといたから…」
「ああ、落ち着いたら…いつか訪ねるのもいいな」
「え⁈本当?村へ遊び来てくれる?」
「落ち着いたら…な、いつになるか分からないが…」
その言葉だけでリーサは一歩前へ進む元気が出たようだ。
「うん!きっとだよ…!」
一歩、また一歩…2人の姿が遠ざかる。
こんなに…人と長く接したのは初めてだった。
人間が嫌いだった。
分かり合おうとも思わなかった…
けれど…
分かり合いたいと…思える人間もいるのだと…
この、たった数日でルピナスに新しい心が灯った…そんな感じがした。
「また、2人に会いに行こう」
口の中で小さく囁き、ルピナスも踵を返す。
(78話へ続く)