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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】78話 2人の姿が地平から消えたのを…

第78話

 

2人の姿が地平から消えたのを確認して、ルピナスは背を翻す。

 

とりあえず、都市へ戻りもう少しだけ情報収集をしようと思った。

 

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また、王都へ向かうにも旅券や旅道具が必要だ。

多少食わずとも、王都までたどり着く事は可能だとは思ったが…

衛兵に疑われ、騒がれては潜入失敗だ。

 

出来るだけ…この世界の人間に紛れ、疑われないよう王都へ入る必要もある。

 

「やはり…冒険者登録してみるのが妥当か…」

 

実力と身上さえクリアすれば、冒険者になる事自体は容易いという。

だが当然、冒険者業で食い扶持を稼ぐには相応の努力が必要となるが…

 

ルピナスにとっては、王都へ潜入する身分証としての身上が出来れば、それで十分だ。

 

「問題は…書類審査の身上か…」

 

四大都市に入る時の旅券は…

リーサ達の兄君の身上を使わせて貰った。

更に2人も同行してたから、全く疑われはしなかったが…

果たして再度兄君の身上を使用して良いものなのか…

 

「…今は一か八か…使わせて貰うしかないか…」

 

せめて、王都へ無事入り、調査するまでの間…

本人には申し訳ないが…身上を使わせて貰おう。

疑われ、騒がれては本人にも迷惑がかかる。

 

それだけは回避しなければ…

と念じながら、再度都市の門をくぐるべく歩き始める。

 

 

(79話へ続く)

【KADODE】77話 「リーサ、準備はいいか?」

第77話

 

「リーサ、準備はいいか?」

 

「…うん…」

 

東の空がやっと白み始めた早朝。

辺りはまだ、夜の気配を残し寒々としているが

天上は雲ひとつない晴天が広がる。

 

ここから、丸一日近く歩き倒すには良い天候だが…

リーサはやはり、曇天のような表情だった。

 

「ほら、ルピナスさんに挨拶して…

出立するぞ!」

 

中々ルピナスの前から動こうとしないリーサだ。

ついには、鼻声になる。

 

「…うぅ…ルピナスさん…」

 

「道中気を付けろ。」

 

「うん…」

 

2人には見えないカドデもルピナスの背に隠れながら涙目だ。

 

ルピナスさん…手紙…書いてね。

村の住所…メモしといたから…」

 

「ああ、落ち着いたら…いつか訪ねるのもいいな」

 

「え⁈本当?村へ遊び来てくれる?」

 

「落ち着いたら…な、いつになるか分からないが…」

 

その言葉だけでリーサは一歩前へ進む元気が出たようだ。

 

「うん!きっとだよ…!」

 

一歩、また一歩…2人の姿が遠ざかる。

 

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こんなに…人と長く接したのは初めてだった。

 

人間が嫌いだった。

分かり合おうとも思わなかった…

 

けれど…

 

分かり合いたいと…思える人間もいるのだと…

 

この、たった数日でルピナスに新しい心が灯った…そんな感じがした。

 

「また、2人に会いに行こう」

 

口の中で小さく囁き、ルピナスも踵を返す。

 

 

(78話へ続く)

 

 

 

【KADODE】76話 リージの問い掛けに…

第76話

 

リージの問い掛けに暫く沈黙していたルピナスだったが…

 

「問題は無い。必要なら都市で冒険者登録でもして稼ぐとしよう」

 

ルピナスとしては、かなり珍しい軽い冗談のつもりだったが…

 

ルピナスさん冒険者になるの⁈」

 

焚火の前でうとうとしかけていたリーサが食い付く。

 

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「リーサ…!夜中に大声は危険だぞ!」

 

「うぅ…ごめん。

でも、ルピナスさん羨ましい事言ってるから…」

 

まさに心の声が表に出て来た…という感じだ。

 

「…なれるかどうかは…分からないがな」

 

軽い感じで言ってしまった事を若干後悔するルピナスだ。

 

ルピナスさんなら、なれるよ!

凄く強いし!大人だし!」

 

「…大人…」

 

リージが半目がちにリーサを見る。

 

「いぃなぁ〜…大人なら…

両親の意見気にせずに好きな職に就けるもんね…」

 

「お前にも…まだまだこれからがあるだろう?」

 

「そうだけど…歯がゆいよ…」

 

しょぼんと目と、おさげが垂れる。

 

「しっかりと一歩一歩大人になっていけばいい…」

 

「うん…」

 

大人になったら…好きに生きられる…

 

ルピナスの、今や鋼に変わり果ててしまった心臓に冷たい杭が刺さるような心地がした。

 

そのような事…鑑みる環境に無かったルピナスの過去…

だからこそ願う。

この2人の自由なる未来を…

 

 

(77話へ続く)

【KADODE】75話 所持金無しの旅人など…

第75話

 

所持金無し食料無しの旅人など…普通あり得ないだろう。

 

本体のルピナスの体はいくら食事しなくてもいいとして…

この世界では、ルピナスも1人の人間として存在を書き換えられる。

 

では、この世界で死を迎えたらどうなるか?

 

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カドデプログラムの住人として登録してある人間は、そのまま夢想世界での輪廻を辿り、別の人間として誕生することになる。

それがこのカドデプログラムの特色だ。

 

…では、登録していないルピナスはどうなるか…?

 

それは未知数である。

 

少なくとも死を迎える時の精神回路へのかなりな衝撃はあるだろう。

 

精神が脆ければ、現実の肉体や精神に異常をきたしてしまうだろう。

 

…ただし、ルピナスはそんなに柔にはできていない筈だが…

 

とはいえ、死を迎えれば調査もそこで終了だ。

再度この世界へ入る事は不可能かもしれない。

 

「所持金か…」

 

この世界に存在する以上、この世界のルールに則っとらないといけないのかもしれない…

 

すぐそこで寝こけている主プログラムのカドデなら…

金などいくらでも作り出せそうだが…

 

(本人が調子悪そうだしな…何より…

ルール違反を嫌いそうだ…)

 

面には決して出さぬ微かな笑みを浮かべるルピナスだった。

 

 

(76話へ続く)

 

 

【KADODE】74話 今夜は良くても村に着くまでは…

第74話

 

「今夜は良くても、村に着くまでは気を抜くな…」

 

ぽつりと、焚火を前にルピナスが2人に囁く。

 

ルピナスから他者へ気遣う言葉など…滅多になかった。

 

リーサもリージも一瞬キョトンとした後…

柔らかい笑顔で頷く。

それから…

何だかんだと面倒見の良いリージが気になってた事をルピナスに聞く。

 

「僕らと別れてから…ルピナスさんはどうするんですか?

…その…

国王と怪物との因果関係を探るとして…」

 

少し言いずらそうに言葉を選びながら話す。

 

「旅を続けるには…宿とか食料とか…

その…先立つ物、お金が必要になりますが…」

 

リージは、ルピナスと最初に会った時にルピナスの所持金が殆ど無い事を聞いていた。

 

所持金…

 

本体である現実の体は、食料を必要とせず…

体内で活動に必要なエネルギーを自己精製できるようになっている。

 

…ただし…この世界はカドデによるシステムで'生きる'…という事象をルール付けされている。

このルール上…

食料を取らない…ということは死へ繋がる。

 

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…それは…プログラムの中の住人として認められて無いルピナスにも…

果たして当て嵌まるのか?

 

ルピナスの背中に凭れてカドデはスヤスヤと寝息を立てている…

 

 

(75話へ続く)

 

【KADODE】73話 帰りの道のりは、行きよりも…

第73話

 

帰りの道のりは行きよりも距離が短く感じられた。

 

2人の姉弟は、こんな長距離を今まで歩いた事がなかった。

父ら自衛団に同行して山道を散策した時でさえ、朝行って夜には帰宅だった。

 

今回の旅路は(旅としては、ごく小規模だが)2人にとって、忘れられない学びの場ともなった事だろう。

 

「あ〜…面白かったなぁ!

いっぱい歩いて、野宿も経験して…

直接戦えなかったけど、ワイパーンにも遭遇したし、カッコいい冒険者さんにも出会えた!」

 

「リーサ…印象に残ってるのが、それなのか?

街の事が二の次だとはな。」

 

「もちろん、大都市の記憶も大きいよ!

ほんっと素敵だった!

大都市は…また絶対行くんだから!」

 

「そうだね。

僕も、もう少し成長して…また行ける事なったら…都市図書館にじっくり行って勉強したいよ…」

 

「リージらしいな〜

今回は、外観だけの見学だったもんね…

本当、都市をじっくり見て回るには時間足りなかった!」

 

「大半が、リーサのワガママに付き合わされただけだったもんな〜」

 

「あ!酷ぉい!…そんな事…

ちょっとしかないもん〜」

 

日が沈み、尚も歩いた後、遅めの夕食と野宿の為に焚火をする。

 

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この姉弟ルピナスと…こうして共にいられるのも最後になる。

 

姉弟はそんな哀愁を振り払うべく、焚火を囲い努めて明るく土産話を繰り出していた。

 

 

 

(74話へ続く)

 

【KADODE】72話 外は日が傾き、街中を金色に染めていた。

第72話

 

酒場の外へ出た一行を出迎えたのは…

日が傾き、街中を金色に染めていた夕日だった。

 

「もう日が落ちるのかぁ…なんだかあっという間…」

 

今日、午前中に街へ入ってから数時間…

2人には、あっという間であり、様々なカルチャーショックを詰め込んだ長き数時間だっただろう。

 

「大人になったら…また絶対に来るんだ。

次は2〜3泊しちゃうんだから!」

 

名残惜しそうに、けれど清々しくリーサは街門へ歩んで行く。

 

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大都市の街並み、これまでの旅路…そこで知り得た事もまたリーサやリージの大きな糧となり、自分の未来への選択肢を広げる豊かな要因になるだろう。

 

お土産を持って帰ろう…

 

勿論、物品も買ったけれど…

口から伝える事お土産もいっぱい出来た。

 

一行の目の前に、巨大な門が聳える。

一歩一歩踏みしめるように門をくぐる。

 

ルピナスさん、本当にいいの?

明日の朝まで…帰り道付き合って貰うの…」

 

もう一度リーサが確認する。

 

「ああ。お前たちこそ、明日朝からは2人だぞ。気を引き締めて帰れ」

 

「はい!早めに歩いて行けば…明日夜には村へ着くと思います」

 

明日朝には、ついにルピナスとの別れもあるのだ。

門を過ぎ、遠ざかりつつある大都市をもう一度リーサは振り返る。

 

「楽しかったな…」

 

寂しさを振り切るように、また前を向き歩き出す。

 

 

(73話へ続く)