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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】107話 「なんで…何で…」

第107話

 

「なんで…何で…」

 

リージの震える唇は、そう紡ぐばかりだった。

父は愛用の大斧を握り締めたまま絶えていた。

 

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帰宅したリーサから返却されたのだろう。

 

では、リーサはどこに?

 

村の近くで、リージを救援へ向かわせて

自らは村へ行ってしまった。

 

探すのが怖かった。

 

つい、十数時間前まで共に街まで出かけた…

元気だけが取り柄の双子の片割れ…

 

そんな片割れの変わり果てた姿なんて見たくなかった。

全てから目を逸らしたくなっていた時…

 

「…こっちだ…」

 

抑揚の無い、静かな声が聞こえた。

 

実際、ルピナスには人間の感情に共感する機能は無く…

嘆くリージを見て、仄かに胸の奥に細波を感じるだけだった。

 

その細波の意味を…知りたいと願いつつ

 

そっと指を指す。

 

「こっちだ。…声がする。

…リーサの声だ。」

 

 

(108話へ続く)

【KADODE】106話 村の中を歩く程…

第106話

 

村の中を歩く程、悲痛で砕け落ちそうになる気持ちを…

それでも繋ぎ止め、足を前進させる。

 

ほんの僅かだが、希望があった。

 

村の誰かが生き残っている…

それに縋るように村外れまで歩いて来たが…

 

リージの歩みはついに止まってしまう。

 

村の外れには、激しく戦った痕跡があった。

曲がったり、折れた剣や槍…

破壊された村を囲む柵や門…

そして

必死に抵抗して倒れた人間の遺体…

 

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「…自警団の…皆だ…」

 

リージは吸い寄せられるように、ふらふらと一体の遺体へ歩み寄る。

 

「…!!

…と、…父さん…!!」

 

絞り出すように声を上げリージは遺体の元へ膝をつく。

 

その遺体は誰よりも損傷が激しかった。

全身傷だらけで、致命傷だったのだろう首元の一撃を受けても尚、立ち上り戦おうとした…

 

大量の出血は地面を広く黒く染めていた。

 

 

 

(107話へ続く)

【KADODE】105話 リージにとって村人全員が親戚のような…

第105話

 

リージにとって村人全員が親戚のような存在だった。

 

…だから、分かってしまうのだ。

 

見慣れた家々の…

変わり果てた瓦礫の下から覗く手足の主を。

ある者は下敷きに…ある者は黒炭と化し…

 

皆…つい数日前まで元気に言葉を交わしていた者達だ。

 

街へ行くリージ達を見送りしてくれた。

土産を買ってこいと軽口も言っていた…

 

こんな一瞬で、もう二度と言葉を交わすことが出来なくなったのだ。

 

一歩、また一歩進む度にリージにその悲痛がのしかかる。

 

「…う、…う…みんな…」

 

うずくまり、泣きじゃくりたくなる。

 

そんなリージの歩みが止まる度にルピナスは背後を振り返り様子を伺う。

 

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ルピナスの言っていた「歩けるか?」の、

真の意味を噛みしめるリージだった。

 

 

(106話へ続く)

 

【KADODE】104話 「急いで助けましょう!」

第104話

 

「急いで助けましょう!」

 

リージは未だ震える膝を叱咤しながらルピナスに近づく。

辺りを見渡したが…人の声は聞こえない。

聞こえるのは炎の燃える音や、炭と化した家屋の崩壊する音…

 

「…どの辺から…人の声が…?」

 

「こっちだ。…リージ、歩いて行けるか?」

 

激しい動揺が連続した為に足に力が入らなくなってはいるが…

ルピナスに背負って貰う程、子供では無いと、自分に喝を入れルピナスの後を付いて行く。

 

しかし…

その気力は、焼けた村の中央を通り

外れに差し掛かる頃には潰えようとしていた。

 

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この小さな村に生まれた時からずっと慣れ住んでいたリージにとって、

村人全員が幼馴染みであり、親戚のような存在だった。

 

 

(105話へ続く)

 

 

【KADODE】103話 「人間だ。人間の声がする…」

第103話

 

「人間だ。人間の声がする…」

 

突拍子も無いセリフだが…

リージにとっては、こんな嬉しい言葉は無かった。

 

「本当ですか⁈

この村の生き残り…⁈ 

声は何人ですか?」

 

堰を切ったように捲し立てるリージとは反対に

あくまで冷静な声でルピナスは応じる。

 

「…1人だ…少し…苦しそうに聞こえるな。」

 

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リージはどんなに耳を澄ましても…声は聞こえない。

先の戦闘にしろ、聴力にしろ…

ルピナスの超常的な能力に、今は疑問を抱いている余裕はリージには無かった。

 

…生き残りは…たった1人…

 

それでも…

故郷の誰かは生きていてくれてる…

自分が今迄生きてきた中の親しいもの全てが失われたと絶望していたリージに

仄かに希望が灯る。

 

「急いで助けましょう…!」

 

気持ちが急く。

膝の震えが煩わしいリージだった。

 

 

(104話へ続く)

【KADODE】102話 未だ膝が震え、足元が覚束ないが…

第102話

 

未だ膝が震え、足元が覚束ないが…

リージはなんとか立ち上がり周囲を見渡した。

 

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家々は炎が燻り黒煙を上げたままだ。

風は吹いていないし、これ以上燃え広がらないようだが…

 

その炎を背景に火よりも赤い血を流し三匹のワイバーンが屠られている。

 

ルピナスはそんな光景を見向きもせず、別の事に意識を集中させていた。

 

ルピナスさん…?どうしたんですか?」

 

まさかまだワイバーンがいるのだろうか?

…それとも別の怪物?

リージの背筋に悪寒が走る

恐怖で震え出しそうになる自分を必死で叱咤し、ルピナスの反応を待つ。

 

「…人間だ」

 

「…え?…」

 

ルピナスの突飛な言動に首を傾げる。

 

「…声が聞こえる」

 

追加されたルピナスの言葉に、リージの胸はドクンと鼓動を上げる。

 

 

(103話へ続く)

【KADODE】101話 ワイバーンの首に蹴りを入れ…

第101話

 

ルピナスワイバーンの首に蹴りを入れ、動かなくなったところで、トドメに羽に突き刺さっていたナイフで首を刎ねる。

 

ルピナスは戦闘慣れしていた。

 

リージにとっては全てが初めて目の当たりにする事で…

例え憎い怪物とはいえ、凄惨な戦闘の光景に多少の恐怖を抱いていた。

 

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ルピナスが無事だった事、怪物が倒された事…その恐怖…

諸々が混然一体になってしまい、暫くは何も出来なかった。

 

「…無事か?怪我は…?」

 

低く少しばかり不器用な声がリージにかけられた事でやっと我に返る。

 

「あ…あの…。ルピナスさん…

その…ぼ、僕…何も出来ずに…」

 

真っ先に言いたい事は、そんな事では無い筈なのに…

ルピナスの無事や、ワイバーン討伐の感謝など…言わなくてはいけないのに…

気持ちが絡まりすぎて、上手く頭が回らなかった。

 

 

(102話へ続く)