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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】64話 隣席の冒険者は討伐の成果を…

第64話

 

隣席の冒険者らは、討伐の成果を称え合う。

給仕の少年は注文品を料理人に大声で伝える。

カウンター席の男は泥水し別れた女房の未練を独り言ちる。

 

様々な声が猥雑に店内に響き合う。

 

そんな中、1番奥の席の数人組の冒険者風情の人物らの会話が耳についた。

 

『今回は成功だったな!

ハーピーをほぼ傷無しで捕獲できたぜ!』

 

『あぁ、良い値が付いたな!』

 

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『ホント王都の貴族らは腐ってるぜ…あの怪物どうする気だか…』

 

『王命に背いて怪物を横流しとはな…どうせ、ろくな事じゃない』

 

『しっ!声大きいって…この事バレたら…俺らの命が無いぞ!』

 

『くくっ…ジェンガの旦那のお家も潰されるがな』

 

『おいおい、有り難い雇い主が潰されて言い訳あるか』

 

『でも俺、アイツ嫌いなんだ』

 

『確かに最低な奴だけどな〜?』

 

『ハハハハッ』

 

 

周囲には殆ど聞き取れない程の囁きで奥席の冒険者らは盛り上がっていたが…

ルピナスはその会話の一部始終を聞いた。

 

横流し

ジェンガ

 

国王が、何故怪物を集めているのかは…

未だ分からないが…

王命に反して怪物を入手している人物の情報を得た。

 

「やはり王都へ行かなければな…

ジェンガという人物も気になるところだ」

 

 

 

(65話へ続く)

 

【KADODE】63話 「うーん…何だか…

第63話

 

「うーん…何だか、いざとなると…見知らぬ人に話し掛けるのって勇気いるね」

 

リーサがキョロキョロしながら店内を見渡す。

 

…無理も無い。

店内で飲んでる客らは一様に泥水している。

まだ夕時ながら、出来上がっている、のだ。

まして、先日ワイパーン討伐で出会った冒険者らのように柔軟な女性の姿は残念ながら店内には無さそうだ。

 

皆、赤ら顔した壮年の男達…

リーサから言わせれば、怖そうなオジさん達…である。

 

しかしルピナスは集中し周囲に耳をそばだててみた。

 

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本来、現実世界でのルピナスの兵器として造られた体は全ての機能が人間の数倍から数十倍も上回っている。

当然、聴覚機能も生身の人間の比では無かった。

 

…とはいえ、それはあくまで現実世界での事。

このカドデが創り上げる世界では身体能力も別物である。

 

それでも、この世界へ降りてきた直後の戦闘では、「ただの人間」としては、運動能力は高いほうだと感じた。

 

ならば聴覚はどうだ?

 

ルピナスは集中する。

 

自分らの座席の隣の人間達の他愛無い会話…

給仕が注文を受けている声…

厨房奥の調理人達の会話…

 

集中すれば、問題無く周囲の声は頭に入ってきた。

 

カドデが隣で「盗み聞きだ!」と揶揄が騒々しいが…

 

(64話へ続く)

【KADODE】62話 その酒は美しい琥珀色をしていた…

第62話

 

その酒は美しい琥珀色をしていた。

 

「お酒って美味しいのかなぁ?」

 

「ダメだぞリーサ!」

 

「分かってるわよ〜!ただ聞いてみただけ」

 

ルピナスにも味は分からないのだ。

琥珀色のその液体…酒、は…良く冷えているらしく、グラスに水滴が付いていく。

 

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飲まず放置しておくのも不自然なので、一口だけ口にしてみる。

 

嗅いだことの無い、しかし豊潤な匂いが鼻を通っていく。

すぐそのあとに舌に伝わる苦味とアルコール特有の風味が喉を熱していく。

後味は驚く程すっきりしていて、苦味が後を引かなかった。

 

「…悪くは無い味だ。

しかし、リーサ達には苦いと思う…」

 

リーサは何度も頷き、いつか大人になったら必ず注文しようと心に誓うのだった。

 

「ところで…誰か…話し易そうな人に、話題を振ってみましょうか?」

 

飲み物に少し気を取られていたが…

ルピナスの本題はここからだった。

 

店の中を見渡してみる。

 

店内は小さい…という程では無い。

4〜5人掛けのテーブルが10程あり、酒の棚を囲むようにカウンターがこれも10脚程…

 

昼から開店しているという店内には、まだ夕方入りがけであるが、客が数組腰掛けていた。

 

「…うーん…いざとなると…

何だか声掛け辛いね…」

 

 

(63話へ続く)

 

【KADODE】61話 結局3人は酒場に入った。

第61話

 

結局3人は酒場に行った。

 

例の如くリーサが故郷の村へ帰る前に、どうしても見てみたいと嘆願し…(駄々をこね)たのだ。

 

かくして3人は路地裏にある冒険者が多く集うという酒場に足を踏み入れる。

 

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酒場の店主も保護者同伴なら…と、入店を拒否しなかったが…

何とも言えない表情だったのは言うまでも無い。

同じく、嬉々としながらアイスミルクを注文するリーサを隣に何とも言えない表情になったリージだった。

 

「うわぁ…これが大都会のミルクなのね!

見て見てリージ!氷入ってるよ!

村じゃ、夏場氷なんて…ほぼ目にしないよね⁈」

 

「ま、まぁね…村では氷室の規模も小さいから、重病人にしか使わないね…」

 

「ん〜!美味しい♫都会の味がする!」

 

「… …ミルクはどこでも一緒だよ…」

 

はしゃぐリーサを横に周囲の好奇の目にいたたまれないリージ。

 

ルピナスさんはお酒頼んだんだね!

何ていうお酒?」

 

好奇心旺盛なリーサである。

 

「さあ…。メニューにあった適当な安酒だ」

 

実のところ、ルピナスは酒を飲んだ事が無かった。

今までの人生の中でそんな人間的な事をする術など一切無かったのだ。

 

 

(62話へ続く)

60話【KADODE】久々に自分へ話しを振られる…

第60話

 

久々に自分へ話しを振られる。

 

ルピナスは決して自分の目的やカドデの事を忘れていた訳では無い。

けれど、街へ入りはしゃぐ2人のテンポ良い会話など聞いてるうちに…ずっと、この2人と一緒に居るような…そんな気分が一瞬でもしていた事に気付く。

 

今日でこの2人と別れるのだ。

自分らとは目的が違う。

彼らは単純にこの街へ観光に来ているだけ…

一方自分は…この世界…この夢想空間の異変を探る調査に向かう身。

 

そもそも、同じ盤上では無かったのだ。

 

…それでも、2人と過ごした時間は居心地が良かった。

とうに人間らしい心を失ったと思っていたルピナスを、人として扱い接してくれた彼らと行動を共にする事で…

束の間ではあるだろうが、ルピナスにも人の心が宿り出したことは…ルピナス自身にも少しは実感できただろう。

 

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「2人と過ごせて、楽しかった…」

まだルピナスには、そんな言葉を発する事を思考する自覚は無さそうだけれど…

 

「…自分は、この後酒場へ行ってみようと思う。国王の噂も酒の席なら…聞けるかもしれないしな。」

 

「きゃぁぁ♫酒場!!冒険者には無くてはならないシチュエーションよね⁈

私も行く〜!素敵よ〜!」

 

「リーサ…

僕らはまだ未成年だぞ?店主に追い出される!」

 

「む…お酒飲まなきゃいいじゃない!

私、ミルク好きだよ?」

 

「はぁ…」

 

リージ、タバコの煙と酒の匂い、厳つい冒険者でむせ返る店内にミルクを注文するリーサの姿を想像してため息を漏らす。

 

 

(61話へ続く)

 

 

59話【KADODE】ギルド内は混み合っていて…

第59話

 

ギルド内は混み合っていて、数ヶ所ある窓口も人の行列でいっぱいだった。

 

「うぅ〜ん…何ていうか…

ゆっくりギルドや冒険者について聞ける感じじゃないなぁ…」

 

大きな掲示板に集まる冒険者や、窓口へ向かう人達は皆、忙しそうで、この建物内には明らかに違う空気感のリーサ一行に悠長に声を掛けてあげる余裕など無さそうだった。

 

「…それに…皆さん怖そうな顔してるし〜

…あぁ〜、冒険者のフレアさん来ないかなぁ」

 

「大きな街だし、そんな奇遇なこともそうないよ。

…とりあえず…そろそろ冒険者達から邪魔だと文句来そうだし、一旦外出てみよう。」

 

リージがため息をつきながら言うと、リーサも仕方無しと後に続く。

 

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一行はギルドの建物外の人通りの少ない一角で一息つく。

 

「…これからどうする?

私も、もうちょっと冒険者のシステムとか体験談とか聞きたいけど…

何より、ルピナスさんの情報収集があんまり捗って無さそうだよね…」

 

「リーサの事はいいとして。

…確かにルピナスさんは…

どうします?

僕らは、もう数時間街の見物したら…閉門前には街を出て村に帰る予定です。

ルピナスさんは…」

 

久々に自分へ話しを振られる。

 

 

(60話へ続く)

58話【KADODE】「なるほど、冒険者も腕っぷしだけの…」

第58話

 

「なるほど…さすがに冒険者も腕っぷしだけのならず者って訳にはいかないんですね…」

 

リージが感心したように言うとリーサは…

 

「リージ!あなたも冒険者に興味湧いてきたの? 

百歩譲って姉弟冒険者ってのもいいよね!」

 

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「…僕は冒険者に興味持ったんじゃなくて、ギルドのシステムがしっかりしてる事に感心してたんだよ。」

 

「え〜…

まぁ、確かに…リージは冒険者ってより、ギルド職員向きよね〜」

 

そんな姉弟の会話を聞いて、ギルドの職員は

 

「おやおや!未来の同僚さんですか…!

お姉さんは冒険者、弟さんはギルド職員…

中々素敵ですね〜♫」

 

など、冷やかしてくる。

 

「職員さん…僕は出来れば学者になりたいんですよ。

ギルド職員は…ちょっと…」

 

「リージ!職員のお兄さんに失礼じゃない!」

 

「いやいや!色々な夢を持つことは素敵だよ!

…僕も昔は…、、、」

 

「…ん?」

 

「…ああ、いや、何でも無いんだ。

…じゃあ、僕もそろそろ昼飯食べて仕事に戻らないといけないからね、この辺で…」

 

「あ!そうでした…案内してくれたり、色々教えてくれて…本当にありがとうございます!」

 

「未来有望な若者たちと話せて…僕も良かったよ!

見学だけなら自由だから…ゆっくりギルド内見て行くといい…」

 

「それじゃ…」…と言いながら職員は奥の部屋へ行ってしまった。

 

「またあの親切な職員さんに会えるといいなぁ」

 

 

(59話へ続く)