【KADODE】62話 その酒は美しい琥珀色をしていた…
第62話
その酒は美しい琥珀色をしていた。
「お酒って美味しいのかなぁ?」
「ダメだぞリーサ!」
「分かってるわよ〜!ただ聞いてみただけ」
ルピナスにも味は分からないのだ。
琥珀色のその液体…酒、は…良く冷えているらしく、グラスに水滴が付いていく。
飲まず放置しておくのも不自然なので、一口だけ口にしてみる。
嗅いだことの無い、しかし豊潤な匂いが鼻を通っていく。
すぐそのあとに舌に伝わる苦味とアルコール特有の風味が喉を熱していく。
後味は驚く程すっきりしていて、苦味が後を引かなかった。
「…悪くは無い味だ。
しかし、リーサ達には苦いと思う…」
リーサは何度も頷き、いつか大人になったら必ず注文しようと心に誓うのだった。
「ところで…誰か…話し易そうな人に、話題を振ってみましょうか?」
飲み物に少し気を取られていたが…
ルピナスの本題はここからだった。
店の中を見渡してみる。
店内は小さい…という程では無い。
4〜5人掛けのテーブルが10程あり、酒の棚を囲むようにカウンターがこれも10脚程…
昼から開店しているという店内には、まだ夕方入りがけであるが、客が数組腰掛けていた。
「…うーん…いざとなると…
何だか声掛け辛いね…」
(63話へ続く)