60話【KADODE】久々に自分へ話しを振られる…
第60話
久々に自分へ話しを振られる。
ルピナスは決して自分の目的やカドデの事を忘れていた訳では無い。
けれど、街へ入りはしゃぐ2人のテンポ良い会話など聞いてるうちに…ずっと、この2人と一緒に居るような…そんな気分が一瞬でもしていた事に気付く。
今日でこの2人と別れるのだ。
自分らとは目的が違う。
彼らは単純にこの街へ観光に来ているだけ…
一方自分は…この世界…この夢想空間の異変を探る調査に向かう身。
そもそも、同じ盤上では無かったのだ。
…それでも、2人と過ごした時間は居心地が良かった。
とうに人間らしい心を失ったと思っていたルピナスを、人として扱い接してくれた彼らと行動を共にする事で…
束の間ではあるだろうが、ルピナスにも人の心が宿り出したことは…ルピナス自身にも少しは実感できただろう。
「2人と過ごせて、楽しかった…」
まだルピナスには、そんな言葉を発する事を思考する自覚は無さそうだけれど…
「…自分は、この後酒場へ行ってみようと思う。国王の噂も酒の席なら…聞けるかもしれないしな。」
「きゃぁぁ♫酒場!!冒険者には無くてはならないシチュエーションよね⁈
私も行く〜!素敵よ〜!」
「リーサ…
僕らはまだ未成年だぞ?店主に追い出される!」
「む…お酒飲まなきゃいいじゃない!
私、ミルク好きだよ?」
「はぁ…」
リージ、タバコの煙と酒の匂い、厳つい冒険者でむせ返る店内にミルクを注文するリーサの姿を想像してため息を漏らす。
(61話へ続く)