【KADODE】63話 「うーん…何だか…
第63話
「うーん…何だか、いざとなると…見知らぬ人に話し掛けるのって勇気いるね」
リーサがキョロキョロしながら店内を見渡す。
…無理も無い。
店内で飲んでる客らは一様に泥水している。
まだ夕時ながら、出来上がっている、のだ。
まして、先日ワイパーン討伐で出会った冒険者らのように柔軟な女性の姿は残念ながら店内には無さそうだ。
皆、赤ら顔した壮年の男達…
リーサから言わせれば、怖そうなオジさん達…である。
しかしルピナスは集中し周囲に耳をそばだててみた。
本来、現実世界でのルピナスの兵器として造られた体は全ての機能が人間の数倍から数十倍も上回っている。
当然、聴覚機能も生身の人間の比では無かった。
…とはいえ、それはあくまで現実世界での事。
このカドデが創り上げる世界では身体能力も別物である。
それでも、この世界へ降りてきた直後の戦闘では、「ただの人間」としては、運動能力は高いほうだと感じた。
ならば聴覚はどうだ?
ルピナスは集中する。
自分らの座席の隣の人間達の他愛無い会話…
給仕が注文を受けている声…
厨房奥の調理人達の会話…
集中すれば、問題無く周囲の声は頭に入ってきた。
カドデが隣で「盗み聞きだ!」と揶揄が騒々しいが…
(64話へ続く)