【KADODE】86話 未だ夜明けには届かず…
第86話
未だ夜明けには届かず、とっぷりと夜闇に覆われた道は昼間の熱が天へ還り、冷えた空気が広がっていた。
先程まで流していた汗が冷え、寒気を感じたリージだったが、ルピナスの背中に凭れながらポツリポツリと経緯を話しいく。
「…夕日が沈む頃には村の近くまで辿り着けたんです…
あと、丘を一つ越えて行けば到着できる…って時に…」
リージの指先が僅かに震える。
「…煙が見えたんです。
村の方角から…」
「…煙?」
「炊事とかの煙ではありません…
大量の黒煙…
どこかの家が…ううん、幾つもの家が火事になってる規模の…」
「…野盗か?」
「いえ…
違います。違うって断言できる…」
「……?」
「…だって、その黒煙の上空には…
いく体ものワイパーンが飛んでいたのだから…」
(87話へ続く)