【KADODE】82話 心臓が壊れるかと思う…
第82話
心臓が壊れるかと思う。
今までの人生の中で…こんなに走り詰めた事は無いだろう。
元々文系派の自分は、運動する事も苦手だ。
これが、ただの運動や訓練なら…とうにリタイアしてる筈だ。
しかし…
今は走らなければいけない。
一刻でも早く…伝えなければ…
脳裏には、走馬灯のようにいくつもの感情が順繰り巡る。
…苦しさ…焦り…恐怖…
使命…祈り…願い…
走り始めた時はまだ陽が残ってもいたが、
今はどっぷりと闇が周囲を包み込んでいる。
空を見上げ、薄雲の間から少しばかり星が見え隠れしている。
目印の星は雲間からも輝きを放っていて、目的地を見失う事は無さそうだ。
それに街道も闇の中ではあるが、辛うじて続いているのが分かる。
…今ここで…賊や怪物が目の前に現れたら…?
戦闘力も何も無い自分では…
生き残る事は出来ないだろう。
平時の時なら、恐ろしくて単独でこんな闇の中、走れる筈がないだろう。
けれど今は緊急事態なのだ。
一刻も早く都市へ行かなければ…!
その使命感が恐怖も警戒も鈍らせていく。
目が霞む。
頭も上手く働かない…
呼吸が酷く荒く
足が縺れかかる。
手を突いて地面に倒れてしまいたい…
そんな時…
目の前の街道から黒い人影が突如現れる。
(83話へ続く)