【KADODE】68話 ルピナスの感情はまだまだ靄がかかっているように…
第68話
ルピナスの感情はまだまだ靄がかかっているように鈍く、緩慢だ。
喜びや悲しみも…明確に心へ繋がらない。
それでも、ほんの数日…皆と行動を共にして
…ルピナスとしては、劇的に自身の変化があったように思う。
命令や指示では無い、他愛無い会話が…
氷付いたような、ルピナスの心をほんの少しだけでも溶かしていたのだ。
ルピナスとて、この2人との別れは名残惜しかった。
そして…
「びえぇぇぇん〜」
横から、子供の大泣きが聞こえてきた。
「リーサちゃんと、リージ君…お別れ嫌だよう〜」
泣き噦っているのはカドデだ。
皆の会話を聞いて事態を把握したのだろう。
勿論、どんかにカドデが騒いでも周囲は聞こえないが…
「いや、彼らとの別れはもう少し後だ。
さすがに夕刻になる。
子供2人だけで野宿はさせられない…」
「…え…?」
カドデに聞こえるくらいの囁きだったが、
リーサの耳には聞こえてしまった。
「ルピナスさん、途中まで付いて来てくれるの⁈」
「ああ、明日…夜が明けるまでな」
リーサの目に再び涙が溢れた。
顔をくしゃくしゃに笑顔にして。
(69話へ続く)