【KADODE】66話 日が傾く前には…
第66話
日が傾く前には、ルピナスと別れて村へ帰還しなくてはならないのだ。
まさに…
この酒場を出たら、そこで…。
大都市見学にうわついていた気持ちから、急に現実に戻された気分になった。
リーサの手に包まれているカップの中のミルクは半分になっていた。
これを飲み干したら…ルピナスさんとサヨナラ…
「ミルク…もう一杯お代わりしようかな?」
小さく囁いた言葉にリージは
「二杯も飲んだら腹下すぞ?」
相変わらず、真面目なツッコミを入れるが…
リージ自身も心なしか寂しそうだ。
「う、うぅ…」
ついに、リーサは堪え切れず目に涙を溜める。
それにいち早く気付いたのは、店内をぶらぶらしていたカドデだった。
「あ!!リーサちゃん!リーサちゃんが泣いてるよ!
どうしよう⁈どうしよう〜!お腹痛いのかな?」
カドデが大騒ぎし、ルピナスがそれに気付く。
勿論、カドデがどんなに騒いでも周囲は知る術も無いが…
「リーサ、どうした?」
ルピナスが淡々とした口調ながら、他者の様子を聞くのは非常に珍しい事だ。
「うぅ…だって…ルピナスさんとサヨナラだから…」
大きな目いっぱいに、並々と溜められていた涙はついに溢れ、頬に雫が落ちる。
(67話へ続く)