【KADODE】35話 夜明けを報せる鳥のさえずりと…
第35話
夜明けを報せる鳥のさえずりと
ひんやりとした少し湿り気のある朝靄の風がルピナスの頬を触れていく。
ルピナスは結局睡眠を取ってはいなかった。
眠り方を知らない…というのもあるが、
もし…睡眠の中に引き込まれ、目を開けたら現実の世界に戻っていた…
などという事をほんの少しだけ恐れていたのだ。
今のルピナスは、この世界にかなりの興味を持っていたのだ。
初めは単なる調査と確認だけのために降りた筈が…
無論、調査優先だが…偽りでも"人"として触れるこの世界に興味津々だった。
言葉を変えれば、この世界が楽しかった。
とはいえ、まだ今のルピナスには楽しい…などという言葉は自覚してないようだが…
寝袋でぬくぬくと熟睡していた双子の姉弟も朝日を顔に浴びて起き出してきた。
「うわぁぁ!!朝になってる!
失敗した〜!明け方の見張り、私の番だった」
リーサが頭を抱える。
「リーサ…やってしまったな?今日は奇跡的に無事だったようだが…致命的な失敗だぞ?」
「うぅ…ごめん…寒くてつい、寝袋に入っちゃったら…うぅ…」
「大丈夫だ。自分が辺りの様子を伺っていた。
外敵は現れなかったようだ。」
「ルピナスさん…起きててくれたの⁈
ほ、本当にごめんなさい〜!」
ますます項垂れるリーサと、この騒ぎでも未だ起きずルピナスの横でイビキをかいているカドデに…
ルピナスは少し苦笑いした。
(36話へ続く)