【KADODE】33話 村人達から送り出され…
第33話
村人達から送り出され、最初の野宿を迎える。
「ふわぁ…村出た時にゎ凄く緊張したけど…
無事に夜まで歩けたね♫
なんか安心した!」
「こら、リーサ。
気を抜いては駄目だぞ!むしろ夜のが危険だそ」
しっかり者の弟リージは警戒を怠らない。
「夜は盗賊の類も出没するかもしれないからな。」
「ルピナスさん…はぁい!」
ルピナスの忠告にはしおらしく従うリーサだった。
「それにしても…私、野宿で食べる食事って初めてなの!楽しみ〜♫
…リージったら、いつの間にそんなテキパキ料理できるようになったの?」
料理番はリージが率先してやっている。
実のところルピナスは料理をやった事が無いのだ。
むしろ普通の人間がするような野営を体験した事も無い。
知識として最低限は知っていても、手際良く…は無理だった。
そして皆と食べ物を食べるということも…
「リーサが苦手な裁縫を勉強してた時に僕は野営術を勉強してたんだよ。
凝った料理は出来ないけど…
携帯食を作ることくらいなら出来る」
「うわぁ、うわぁ♫
これが携帯食かぁ…パンに干し肉の切り身…チーズにスープ?」
「母さんが湯に溶かすだけで出来る携帯食スープを作っておいてくれたんだ。
そんな日保ちはしないけど、2日くらいなら持ち歩けるって…」
「美味しそう♫
ルピナスさんも食べましょう♫」
「… … 」
果たして自分は食べ物を食べられるのだろうか?
夢想世界で幻の体を手に入れても、尚
食欲というものは感じないが…
半ば強引に手渡されたスープ入りの椀を見つめる。
先日も村で振舞われた茶を飲んだのだ。
一応不可能ではないだろう。
立ち昇る湯気と熱さに気をつけながら
椀に口を付ける。
茶の時とは違う味覚が過る。
塩気と香辛料、後からやってくるコク…がルピナスの脳に新鮮な刺激をもたらす。
「美味いな…」
本当のところ、味覚の優劣は未だよく分からないが…
純粋に口から出た言葉だった。
(34話へ続く)