【KADODE】31話 村を出立して…
第31話
村を出立して1〜2時間は経っただろうか。
午前中ということもあり、未だ日差しは爽やかに降り注ぎ、そよ風も涼やかだ。
「わぁ〜♫綺麗な色の小鳥さんだよ!青と黄色と赤も混じってる〜♫」
カドデはこんなノンビリと世界を歩くことは無かったのだと、しきりに辺りの景色を眺めて楽しんでいる。
双子の姉弟の…弟リージは黙々と歩き、姉リーサは何となしに暇そうな雰囲気だ。
村を出て、怪物の襲撃を警戒して歩きながらも陣を組み慎重に歩いて来たが…
村は既に遥か彼方に、
目を眇めても見えない位置まで来たが
怪物、盗賊どころか凶暴な獣すら見かけず今に至る。
「平和に旅をするってのが一番だけど…
ホント何も無いよね!
さっきから小鳥のさえずりしか聞こえない〜」
「リーサ…父さんが聞いたらまた叱られるぞ?」
「だって…村出て、凄い気合い入れて…
いつ怪物に襲われても対処しようって武器持ちながら集中してたんだよ〜
もう2時間は経つよ…集中力切れた!」
「気を抜いた時こそ危ないんだぞ、自警団で習っただろ?」
「…うぅ…ハィ…」
肩を窄めるリーサ。
姉弟の力関係が伺える。
戦争時…こんな風に人間達の他愛のない会話など聞く機会が無かった。
未だルピナスは感情らしい感情も無いが…
この姉弟の掛け合いは耳障りでは無かった。
「リーサ、武器はしまっておいていい。
…ただ、周囲の気配だけ気を付けていろ。」
ルピナスは初めてかもしれない…人にアドバイス(らしき事)を言ってみた。
(32話へ続く)