【KADODE】30話「準備は出来たか?」
第30話
「準備は出来たか?出立するぞ」
皆で村の門の前に立つ。
「2人共…本当に無理しちゃダメよ?
旅の方…ルピナス様と言いましたか…どうぞ宜しくお願いします!」
「母さんたら大袈裟!今生の別れじゃないんだし、片道たったの2日だよ?」
「リーサ!村の外はいつ怪物が襲って来てもおかしくは無いのだ!
その油断が大惨事を招くことだってあるのだぞ!」
「父さん、リーサには僕が付いてます。
アイツに暴走はさせません。
見晴らしのいい街道を通っていきますし…
大都市に到着したら、伝書鳩を飛ばします」
門に来ても、一家は中々リーサ達を送り出そうとはしない。
次から次へ心配の声を寄せる。
…と、そこへ。
「…全く…お前達…
旅のお方が困っておいでだよ。
早く送り出しておあげ。」
背中が丸くなった老齢のご婦人が
人垣を分け入り近付いて来た。
「お祖母様…」
「昔はね…隣の街なんて普通に買物に出かけられたものなんだけどねぇ
月に1回若人皆で連れ立って行ったものだよ」
「曾ばあちゃんたら、いつの時代の話なのよ」
「さてねぇ…このところ年で記憶も曖昧だよ…そういえば、私の母さんも死ぬ前に同じ事言ってたかねぇ」
「やめてよ、曾ばあちゃん〜!
まだまだボケずに長生きしてよね!」
「可愛い曽孫が帰って来るまで、死ぬ訳にはいかないね」
「うん。待っててね!
沢山お土産買って来るからね♫」
「…では…曾祖母さま、父さん、母さん…村の皆…行って来ます!」
恐らく、村から出かける者は相当久方ぶりなのだろう。
見送る方、旅立つ方も覚悟の出立だ。
ルピナスは出立の準備も踏まえ村で1泊させて貰った。
そして出立は朝の日差しが眩しく照らす白い道を行くことになる。
一見する限りでは、長閑な風景だ。
この先どんな旅が待っているのだろうか。
(31話へ続く)