【KADODE】18話「さて、これからどうする?」
第18話
「さて、これからどうする?」
怪物の亡骸は道から外れた樹林に埋葬する。
(…と、いっても軽く土と枯葉を掛けるだけだが)
現実世界と同じ働きをするなら、微生物や獣が土へ還す作業をするだろう。
「まだ怪物はいっぱいいるの!
退治してかなきゃ〜!」
「あ!あと…あのね、さっき逃げてった女の子が気になるの…無事にお家へ帰ったかなぁ?」
「…そうだな。重症は追って無かったようだが…帰還できたか、確認するか?」
「うん!この先に小さな村があるの!
多分そこに住んでる子だと思う♫」
「…⁈ あ〜〜〜!!!」
「…何だ?」
「大事な事忘れてた!!」
「大事な事?」
「お兄ちゃの名前まだ聞いて無かった!
自己紹介まだだったぁ!!」
「…
……、、それは大事な事なのか?」
「大事だよぅ!仲間なんだから!」
「だから仲間では無いと…
…、、いや、いい。
自分に名は無い。兵器としての製造番号ならあるが…」
「製造番号…?
違うよぅ…ちゃんと名前だよぅ〜」
「…そうは言っても…自分は人間では無い
…いや、元は人間だったのだが…」
「人間だった時の名前教えて♫」
…
人だった頃の名前…?
すぐには思い出せなかった。
そもそも生身の体だった頃から研究所に収容され、被験番号で呼ばれていた。
自分に…名前などあっただろうか?
記憶を更に遡る。
…不思議だ。
戦時中は、このような思考など働かなかった筈だ。
人間だった頃の記憶など…思い出す事すら無かった。
ふと…
古い古い…いつの頃と分からない記憶が
脳裏にフラッシュバックした。
母親なのか?
女性が自分の頭を撫でる…
『ごめんなさい…
お母さん…もう長くないみたい…
お前を置いていくのが…心配…
ああ…神様…
どうか、この子を御守りください…
ルピナス…愛しているわ…』
余りに古く、果たして正確な記憶なのかさえ分からないが…
「…ルピナス…そう呼ばれてた気がする」
「ルピナス兄ちゃ?素敵な名前なの〜♫」
「古い記憶だ。定かでは無いぞ?」
名で呼ばれるのは…違和感しか無い…
それでも…
居心地の悪さの奥に
未知の感情が芽生えた気がした。
(19話へ続く)