【KADODE】14話子供を狙った棍棒は…
第14話
子供を狙った棍棒は地面を抉らせ、
同時に異形の怪物の標的は助けに入った自分にかわる。
怪物の体長はおよそ3メートル弱…
しかし、巨体のせいで腕力はあるが動きが鈍い。
正確に動きを見切り、急所に攻撃を当てれば問題無く倒せそうだが…
今になってようやく…
自身の体に気付く。
この妄想世界では、主システムであるKADODEが全ての幻としての形を創り出す。
その幻の身体に人間の精神が入り込む事で、この世界で形を成す。
しかし、自分はKADODEに登録していた人間ではない。
この幻の精神世界では…KADODEからの身体の提供が無く、自分は精神だけの存在だった筈だ。
だが…実際カドデと名乗る子供を抱き抱える事が出来た。
そっと自身の手を見る。
「妄想世界で形を成してる?」
それだけではない、現実は機械であるはずの自分の身体が…血肉を得た人型をしていた。
「人間…になっているのか?」
この感触は…人間だった頃の感触だ。
夢の中とはいえ、再びこの体になれるとは…
これは…KADODEがもたらしたのか?
それとも異変のせい?
だが、悠長に考えている暇は無い。
標的を自分にした異形の怪物が殺気の漲る棍棒を振り上げてきた。
最強の名を欲しいまま獲得してきた機械兵の身体なら、難も無い筈だが…
このぎこちない人間の身体でどこまで戦えるか?
唯一の強みは経験による思考のみ…
「力では敵わないだろうな…」
棍棒の渾身の一振りを静かにかわしながら、周囲を見渡す。
最初に怪物に追われていた少女の落とした短剣があった。
短剣とリーチの長い棍棒では到底互角では無い。
しかし、そこは戦闘経験の差…
青年は敢えて怪物の懐に飛び込む。
一つ目の怪物は、おめおめと懐に飛び込んで来た者をその大きな手で握りつぶしてやろうと、
手を伸ばしかけた刹那…
首元から強烈な熱を感じた。
怪物は喉を横一文字に深く切られ倒れていく。
(15話へ続く)