【KADODE】ブログ隔日のんびり小説!新規スタート!
【第1話】
十数度目となる世界大戦の後…
軍事兵器として研究、発展していった科学技術は過去の例に漏れず、
民間にも大いに利用、浸透していく。
しかし今大戦での爪痕は生物と大地に、
復興し難い深い傷となり…
唯一の大戦遺産とも呼べる発展した科学技術で、人口の激減した人類は大きな分岐点の選択を迫られる事になった。
“肉体を捨て、プログラムにより完璧に作り出された夢想空間で生きていく”
精神だけの世界でかつて平和に暮らしていた時代のような…
豊かな暮らしをする。
科学技術の飛躍により、それは実現可能となった。
夢といっても自我はあり、夢想空間の中は触れる物全てがリアルだ。
無論他者との交流もできる。
人々の精神を一斉に一つのプログラム空間内で共存させるのだ。
人の精神以外は全てがプログラムが創り出した幻…
…けれど、そんなまやかしの世界でさえ、
人々は幸せに思う。
平和だった豊かな時代…
植物は輝く緑に満ち、鳥の囀りは耳をくすぐる。
食料は各地に流通し、市は笑顔で溢れる。
もう今はこの星のどこにも…その面影を蘇らせる可能性は無い。
大地は深く大きく削られ、大気は毒害に汚染された。
人類は終戦のタイミングを見誤ったのだ。
誰が為の戦だったのか…
そうして人に唯一残されたのが、科学技術と…
“夢を見ること”だった。
人類は地獄の様相なった現実の大地を捨て、
夢の世界への移住を選択した。
(2話へ続く)