【KADODE】5話、自我の目覚め…とはいえ。
【第5話】
自我の目覚め…とはいえ、
元々戦争孤児で、生体兵器となるべく研究所に押し込められた自分は…
殆ど人としての真っ当な記憶が無い。
“人間とは…どのように過ごし、生きていくのか”
そんな興味が微かに沸き起こってくる。
機械の体になる前の自分の記憶は…
白い隔離された壁と、測定、薬の副作用による苦しみ…
他の人間と会話する事も少なく、17〜8歳の頃に生身の体を失った。
今更、生体兵器にさせられた国家を恨む気は無い。むしろ自分の意思では無いにせよ、戦争で多くの命を奪った自分は…
永遠に罪を償い続けなければならないだろう。
忘れる事は許されない。
そう己を律すればするほどに
興味の芽は大きく育つ。
巨大コンピュータのモニターには、夢想世界で過ごしている人々が映し出されている。
皆、幸せそうに暮らしている…
夢想計画は順調に推移していると思っていた矢先…
一つのモニターに刹那、異様な光景が広がった。
一介の村人風体の男の画像がグニャりと歪んだ途端、その画面の男は巨万の富を持つ国王へと変貌していた。
夢想世界なのだから、環境はいくらでも変えられる。
しかし、理に背くような変異が容易に出来ないよう、
主管理プログラムが固く制御している筈だ。
「一体何が起きている…?
空間内が異常事態となっているのか?」
巨大シェルター内の静寂は打ち破られた。
数百年の時を経て…何かが始まろうとしていた…
(6話へ続く)