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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】86話 未だ夜明けには届かず…

第86話

 

未だ夜明けには届かず、とっぷりと夜闇に覆われた道は昼間の熱が天へ還り、冷えた空気が広がっていた。

 

先程まで流していた汗が冷え、寒気を感じたリージだったが、ルピナスの背中に凭れながらポツリポツリと経緯を話しいく。

 

「…夕日が沈む頃には村の近くまで辿り着けたんです…

あと、丘を一つ越えて行けば到着できる…って時に…」

 

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リージの指先が僅かに震える。

 

「…煙が見えたんです。

村の方角から…」

 

「…煙?」

 

「炊事とかの煙ではありません…

大量の黒煙…

どこかの家が…ううん、幾つもの家が火事になってる規模の…」

 

「…野盗か?」

 

「いえ…

違います。違うって断言できる…」

 

「……?」

 

「…だって、その黒煙の上空には…

いく体ものワイパーンが飛んでいたのだから…」

 

 

(87話へ続く)

【KADODE】85話 「ル、ルピナスさん⁈」

第85話

 

「ル、ルピナスさん…⁈」

 

軽々とルピナスに抱えられ、年頃のリージは動揺する。

 

(そりゃ…同年代ではかなりひ弱なほうだけど…)

 

いや、今はそんな事考えてる暇は無い。

一刻も早く向かわなければ…!

 

ルピナスはつい、と走り出す。

 

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軽いとはいえ、あと1〜2年で成人する少年を背負っているとは思えない身のこなしだ。

かなりなスピードがでているのに、身体を激しく動かしているようには感じられない。

 

そしてルピナスは走りながら、息切れする事もなく低く静かに今までの経緯を問う。

 

「…お前達の故郷の村へ向かえばいいのだな?」

 

「…はい。」

 

何となく事態を予感しているルピナスの言葉にリージは意を決して話し始める…

 

 

(86話へ続く)

 

 

 

【KADODE】84話 リージは涙と嗚咽を必死に抑え…

第84話

 

リージは涙と嗚咽を必死に抑え、早急に伝えなければならない言葉を紡ぐ。

 

「…ルピナスさん…お願いです…助けて下さい!」

 

長時間走ってきたのだろう、リージの足はガクガクと震え、立ち上がる事すらままならない様子だが…

それでも必死に再度走り出そうと、疲弊しきって動かない己の足を叱咤する。

 

「…分かった。

案内しろ。移動しながら詳細を聞く。」

 

ルピナスの返事を聞いたリージはまた目に涙を溜める。

泣いている場合ではないのに…

 

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一刻も早くリーサと合流しなければならないのに…

体よ、動け…!

休んでる余裕など無いのだ…

 

そんな満身創痍なリージの体が

不意に中へ浮く。

 

否、ルピナスの腕にひょいと持ち上げられたのだ。

 

「…あ…⁈ 」

 

気が付けば、リージはルピナスの背中に背負われていた。

 

 

(85話へ続く)

【KADODE】83話 足を引きずり、縺れ…

第83話

 

足を引きずり、縺れ…

今にも倒れ込みそうな満身創痍な人影…

 

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「リージ…!いったい、なぜここに?」

 

ルピナスの静かな低い声を聞いた途端、

足を引きずる人影はついに地面へ崩れ落ちる。

 

ゼィ、ゼィ…と荒く息を吐きながらも懸命に言葉を紡ぐ。

 

「…ル、ルピナス…さん…?」

 

「ああ…。

リーサはどうした?

…何があった?」

 

リーサの名を聞いた途端…

リージの堰き止められていた感情が溢れる。

 

「う…、…、うわぁぁぁ…!…っ、…っ…」

 

人前で声を上げて泣くなんて…子供では無いのだから…!

リージの理性が働こうとするが、止められない。

 

「…うっ…っく…」

 

涙を、感情を抑え込もうと必死に目を擦る。

 

カドデが心配そうに、リージの背を撫でる。

 

ルピナスは共に屈んで、リージが落ち着くのを静かに待つ。

 

「…ごめ…んな…さぃ…。

…僕…助けを…

助けを呼んで来いって…頼まれて…」

 

ルピナスが頷く。

焦らせ無いよう、且つ話しを進めさせる。

 

「…昨日…

夕方頃に…、故郷の村に…

もぅ少しで家に帰る…時に…」

 

 

(84話へ続く)

【KADODE】82話 心臓が壊れるかと思う…

第82話

 

心臓が壊れるかと思う。

 

今までの人生の中で…こんなに走り詰めた事は無いだろう。

 

元々文系派の自分は、運動する事も苦手だ。

これが、ただの運動や訓練なら…とうにリタイアしてる筈だ。

しかし…

 

今は走らなければいけない。

 

一刻でも早く…伝えなければ…

 

脳裏には、走馬灯のようにいくつもの感情が順繰り巡る。

…苦しさ…焦り…恐怖…

使命…祈り…願い…

 

走り始めた時はまだ陽が残ってもいたが、

今はどっぷりと闇が周囲を包み込んでいる。

 

空を見上げ、薄雲の間から少しばかり星が見え隠れしている。

 

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目印の星は雲間からも輝きを放っていて、目的地を見失う事は無さそうだ。

それに街道も闇の中ではあるが、辛うじて続いているのが分かる。

 

…今ここで…賊や怪物が目の前に現れたら…?

 

戦闘力も何も無い自分では…

生き残る事は出来ないだろう。

 

平時の時なら、恐ろしくて単独でこんな闇の中、走れる筈がないだろう。

 

けれど今は緊急事態なのだ。

一刻も早く都市へ行かなければ…!

 

その使命感が恐怖も警戒も鈍らせていく。

 

目が霞む。

頭も上手く働かない…

呼吸が酷く荒く

足が縺れかかる。

 

手を突いて地面に倒れてしまいたい…

 

そんな時…

目の前の街道から黒い人影が突如現れる。

 

 

(83話へ続く)

【KADODE】81話 「カドデ起きろ…」

第81話

 

「カドデ、起きろ…」

 

低く囁くような静かなルピナスの声に「ふぇ…?」と、カドデは間の抜けた幼子のような仕草で、目を擦りながら起きる。

 

「もう朝…?都市に行く時間?」

 

「いや、明けるにはまだ時間はあるが…

誰かが近付いて来るようだ…

用心の為に…少し身を隠すぞ。」

 

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極めて静かに言ったルピナスだが…

聞いたカドデはピンと背筋を伸ばす。

 

「ど、泥棒さん⁈

そそそれより、お化けだったら…どうしよう〜⁈」

 

「…、…さあな。」

 

動揺して身を強張らせるカドデを小脇に抱え、ザッと土を焚き火に掛け火を消す。

そのまま少し離れた茂みに身を隠す。

 

足音はカドデにも聞こえる程に近付いて来る。

 

「カドデ、お化けだって怖くないよ!

ピコピコハンマーでやっつけてやるの〜!」

 

ルピナスの背に隠れながら説得力の無い闘志を燃やすカドデだったが…

 

「いや、やはり人間のようだ…しかも…

この気配…」

 

冷静だったルピナスの声が僅かに上ずる。

 

闇の向こうで、足を引きずり荒い息を吐きながらフラフラと歩く影が見え始める。

 

 

(82話へ続く)

【KADODE】80話 焚き火の燃える枯れ木がパチリと…

第80話

 

焚き火の燃える枯れ木がパチリと音を立てて崩れる音に覚醒する。

 

どうやらルピナスは瞬間的にではあるが眠りというものに落ちていたらしい…

現実の体では、あり得ない事だ。

 

隣では、ルピナスに背を凭れスピスピと寝息をたてているカドデがいる。

「カドデの影響か…?」

 

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この世界に来て…自身がとうに忘れていた人間味が…僅かながらも蘇っているような…そんな感覚を覚える。

この世界に存在する全てに影響を与える主プログラムのカドデが…

何らかの影響を及ぼしているのだろう…

 

そんな漠然とした解釈を頭の片隅へ追いやり、小さくなりつつある炎へ枯れ枝を焚べる。

 

天を見上げれば…月がだいぶ傾いている。

夜明けもそう遠くは無さそうだ。

 

て慰めに枯れ枝を手に取ろうとした時…

僅かな風に乗って、足音が聞こえてきた。

 

「獣…?…いや…

これは人間か…?」

 

夜も更け、朝にはまだ至らない時刻だ。

 

夜を徹して都市へ赴く旅人だろうか?

 

「…いや…足取りが不安定過ぎる…」

 

規則正しく歩みを進める旅人のそれでは無さそうだ。

体調が悪く、覚束ない足取りに聞こえるが…

しかし、なぜこんな夜更けに?

 

「しかも単独だ…」

 

どう見ても尋常ではない、その足音にルピナスは即座に警戒し、行動を起こす。

 

 

(81話へ続く)