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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】30話「準備は出来たか?」

第30話

 

「準備は出来たか?出立するぞ」

 

皆で村の門の前に立つ。

 

「2人共…本当に無理しちゃダメよ?

旅の方…ルピナス様と言いましたか…どうぞ宜しくお願いします!」

 

「母さんたら大袈裟!今生の別れじゃないんだし、片道たったの2日だよ?」

 

「リーサ!村の外はいつ怪物が襲って来てもおかしくは無いのだ!

その油断が大惨事を招くことだってあるのだぞ!」

 

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「父さん、リーサには僕が付いてます。

アイツに暴走はさせません。

見晴らしのいい街道を通っていきますし…

大都市に到着したら、伝書鳩を飛ばします」

 

門に来ても、一家は中々リーサ達を送り出そうとはしない。

次から次へ心配の声を寄せる。

 

…と、そこへ。

 

「…全く…お前達…

旅のお方が困っておいでだよ。

早く送り出しておあげ。」

 

背中が丸くなった老齢のご婦人が

人垣を分け入り近付いて来た。

 

「お祖母様…」

 

「昔はね…隣の街なんて普通に買物に出かけられたものなんだけどねぇ

月に1回若人皆で連れ立って行ったものだよ」

 

「曾ばあちゃんたら、いつの時代の話なのよ」

 

「さてねぇ…このところ年で記憶も曖昧だよ…そういえば、私の母さんも死ぬ前に同じ事言ってたかねぇ」

 

「やめてよ、曾ばあちゃん〜!

まだまだボケずに長生きしてよね!」

 

「可愛い曽孫が帰って来るまで、死ぬ訳にはいかないね」

 

「うん。待っててね!

沢山お土産買って来るからね♫」

 

「…では…曾祖母さま、父さん、母さん…村の皆…行って来ます!」

 

恐らく、村から出かける者は相当久方ぶりなのだろう。

見送る方、旅立つ方も覚悟の出立だ。

 

ルピナスは出立の準備も踏まえ村で1泊させて貰った。

そして出立は朝の日差しが眩しく照らす白い道を行くことになる。

 

一見する限りでは、長閑な風景だ。

 

この先どんな旅が待っているのだろうか。

 

 

(31話へ続く)

 

 

 

【KADODE】29話 自警団のメンバーや家族も巻き込んで…

第29話

 

家族はもちろん、自警団のメンバーも巻き込んで、リーサ達の旅の準備に取り掛かる。

 

「リージ、貴方はお腹壊しやすいのだから、お薬持っていきなさい」

 

奥方が甲斐甲斐しく荷物にあれやこれやと詰め込んでいく一方、

父である自警団団長は…

 

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「リーサ!こんな小さな斧を使う気か⁈

万一、賊に襲われでもしたらどうする⁈

…こっちの斧を持って行け!」

 

「え⁈ 父さん…それ、この間新調したばかりの斧じゃない⁈ 

…いいの?」

 

「武器が良ければ未熟なお前でも少しは役に立つだろう。

リージは治療師だ、戦闘は出来ないから…

お前が万一の時には頑張るのだぞ。

無論、不利だと思ったら、リージの助言を聞いて即座に逃げろ!」

 

「うん、分かってる。絶対無理はしない!」

 

「リーサ嬢ちゃん、何かあったら必ず引き返して下さいよ?

この村の近くなら…俺らが絶対倒してやりますから!」

 

「母さん…この荷物は…やっぱり多過ぎだよ」

 

家から出て来たリージは巨大になった荷袋を背負っていた。

 

「そうよ!王様の御幸じゃないんだから〜

私達徒歩で向かうんだよ?」

 

「う〜ん…そうねぇ…

さすがに多い?でも、皆必要な荷物なのよ…」

 

「数日で帰ってくるんだし、着替えなんて一枚でいいよ!食料も片道分で平気よ。

街に着いたら調達するわ♫」

 

まだ見た事がない街を想像してリーサはニヤける。

 

「さて、準備は整ったか?出立するぞ」

 

痺れをとうに切らしていたルピナス

出立を宣言する。

 

 

(30話へ続く)

 

 

【KADODE】28話「カドデはね、ユーレィなんだと思うの〜」

第28話

 

「カドデはね、ユーレィなんだと思うの。

ホントのユーレィじゃないけど、似てると思う♫」

 

ユーレィ…とは、いわゆるゴーストの事だろう。

 

「なぜそう思う?」

 

「この世界の物は触れないし、姿も普段は見えないし…

んと、けどポルターガイストはできるんだょ〜♫

雷を落としたり、風を起こしたり…雨を降らせたり♫」

 

…それは…

どちらかと言えば、神に近い…と言う位置付けでは…

一応、この世界を作り上げている主プログラムなのだから…

 

と、ルピナスは思ったが…

 

己を神の位置に考えてるなど、微塵も伺えないカドデだ。

 

「リーサちゃんとリージ君の事はカドデがいっぱい守るからね!

お母しゃん、お父しゃん安心してね♫」

 

バクの所為で本来の力が出せないカドデが…

それでも必死の顔付きで声を張る。

 

もし…カドデのこんな姿を村人達が見ることが出来たら…

皆どんな反応をするのだろう?

 

自警団団長は呆れ顔になって、その奥方は微笑ましく笑うだろうか…

 

そんな、取り留めもない事を考えるルピナスだった。

 

「カドデは…座敷わらしに似ているな。

ニホンという国の伝説の妖怪だか、童神だかだったか…?」

 

人に聞こえない程度に呟く。

 

口に出して、ルピナスは少し可笑しくなった。

 

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これもまた、人に気付かれない程度に

小さく小さく笑った。

 

 

(29話へ続く)

 

 

 

【KADODE】27話「僕らの上の兄として旅券を発行して貰いましょう」

第27話

 

「そうね!それなら村長も発行してくれるだろうし!」

 

村長とは、奥方の実父であるらしい。多少の事なら大目に見てくれるという話だ。

 

「良かったね♫

仲間も増えて、冒険って感じが出てきた〜♫」

 

カドデはピョンピョン飛び跳ねて喜んでいた。

 

しかし…

 

先程から妙な違和感があった。

決定的な違和感…

 

我ながら、この村に到着して…今頃気付くとは

鈍い。

 

「…カドデ。

…お前…お前は、他の人間からお前の姿…見えていないのか?」

 

突拍子も無いことだ。

しかし、主プログラムたるこのカドデには不可能では無いはずだ。

 

「うん。

カドデはプログラムだから…皆を陰からそっと守るのが役目だから…」

 

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確かに当然の仕様だ。

ここにいる人間達は、今、自分らが夢を見てるとは思ってもみないのだから…

 

主プログラムが姿を見せる訳にはいかないだろう。

 

けれどカドデは、自らの方を決して見ない人間達に必死に話し掛けている。

嬉しそうに…楽しそうに…

一緒に会話の輪の中に居るつもりで…

 

「お茶美味しい?」

 

先程のカドデの言葉を思い出す。

カドデは…

一応、人型のようなイメージを作り上げているが…

人間のように飲食をしている夢を持ち合わせてはいないようだ。

 

「カドデ…人間は好きか?」

 

「うん!大好き!」

 

旅の仲間がまた出来たと、カドデは喜んでリーサやリージの後を付いて回る。

彼らはカドデの存在など知らないだろうに…

 

ルピナスはほんの少し…心臓と呼ぶ箇所がツキンと悲しく痛んだ。

 

(28話へ続く)

 

 

【KADODE】26話「リージ!さすが私の双子の弟♫」

第26話

 

「リージ!私の味方してくれるのね?

さすが私の双子の弟!」

 

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ぐぬぬ…お前達…」

 

「勿論、条件はある。

その旅に僕も保護者として同行する。

それに…旅は4大都市に到着するまで!」

 

「えぇ〜⁈ そんな!たった2〜3日じゃない!」

 

「外の世界を見たいんだろう?

先ずは最初の試しが必要だよ。

そして現実も見れる…この最初の旅を成功させて、もっと旅を続けたいなら…

時間をかけて父さんを説得させてくしかない。」

 

ぐぬぬぬ…」

 

「そうね、少し心配はあるけれど…

しっかり者のリージが付いててくれるなら…

母さんは賛成よ。

ね?アナタ、どうかしら?」

 

「…ぐぬ…ぬ…

… … 外出許可は…4日間までだそ?

都市に到着したら、すぐに帰って来い」

 

「父さん…行っていいの?」

 

「その代わりリージの言う事をちゃんと聞くのだぞ?危険な怪物退治などしないと約束だ!」

 

「う、うん。分かった。

やった…旅ができるのね!」

 

「旅の方…そう言う事だ。

ウチの不肖の双子姉弟を宜しく頼みます」

 

「… … …」

 

当然、ルピナスは言葉に詰まる。

いつの間に、話しが纏まったのか…

いつの間に自分は引率者に指名される結果になったのか⁈

 

自分はただ…怪物の事などを聞きたいだけだった筈が…

 

「旅の方!複雑そうな顔しても無駄よ♫

貴方には旅券が無い!この先、街へ入るには必要不可欠よ!

私を連れて行けば…貴方の分の旅券もドサクサで発行することができるわ。」

 

ウキウキと姉リーサがドヤ顔で語れば、弟リージは冷静に。

 

「僕らには上に兄が1人います。

年齢も近そうですし、兄として旅券を村長から発行して貰うことが出来るでしょう。」

 

 

(27話へ続く)

 

【KADODE】25話「お前は…まだ冒険者なぞになる夢でも見てるのか⁈」

第25話

 

畑仕事と武術鍛錬によって鍛えられたガッシリとした体躯を持つ自衛団団長はその肉体の迫力のまま声を発する。

 

「リーサ!冒険者なぞになる事は許さんぞ!

女らしく家で花嫁修行をしたらどうだ!」

 

「父さんは古いのよ、考え方が!

女だって大切な人を守る為に武器を取って戦いたいわ!

…それに私は…もっと外の世界を見てみたい。

自分の可能性を知りたいのよ!」

 

話しはいつの間にか、親子喧嘩と化して行った。

 

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ルピナスはただ怪物の話しを聞きたいだけだった筈だ、こんな長く滞在するつもりも無かった筈が…

 

「…うぅ…カドデ足が痺れちゃったよぅ〜」

 

「…そうだな…必要な話しは粗方聞いたし、このまま退出するか?」

 

壮絶な親子バトルの喧騒をぬって、ルピナスとカドデは脱出の打ち合わせを思案していた。

 

「アナタもリーサも!お客様の前なのですよ!

少し落ち着いて…」

 

必死な奥方の説得も2人には聞こえないらしい。

…と、そんな時。

奥の部屋から、少年が早足に近付いて来た。

 

「隣の部屋から話しを聞いてれば…

まったく。

父さんもリーサも仕方ないな!」

 

どうやら、この少年は親族らしい。

団長の娘…リーサとよく似た蜂蜜色の髪と、

父とは正反対な華奢な体つき。

どちらかと言えば文系だ。

 

「父さん、リーサは本気だよ。

今回の件が無くても…いずれ家を飛び出してだと思う。

単独で飛び出して…それこそ今度こそサイクロプスに殺されたら悲惨だろう?」

 

「⁈ リージ!なんて事言うんだ!」

 

「可能性は高いよ。

それなら…腕は確からしい、旅の方と一緒の方がいいんじゃないかな?」

 

 

(26話へ続く)

 

 

 

 

【KADODE】24話「国王と願いを叶える悪魔…」

第24話

 

「国王と願いを叶える悪魔か…」

 

「旅の方?王様の事が気になるなら…

王都へ行ってはどうですか?

きっと沢山人がいるし、情報も集められると思うんです!」

 

何故か興奮気味に、先程までシュンとしていた団長の娘がまた前のめりに話す。

 

「…そうだな。

怪物の出没や、願いを叶える悪魔の事…

もう少し調査してみようか。」

 

カドデを見ると元気が無かった。

共に調べて欲しいと言っていたにもかかわらず、妙に消極的な印象だった…

 

「…しかし、旅の方。

ここから王都までは…かなりの距離がありますぞ?

先ずは四大都市の一つに行くのがいいのでは…?

それなら、ここから2日ほど歩けば到着するでしょう。」

 

「ふむ、なるほど…

では、そうしょうか。長い旅になるなら準備も必要だしな。」

 

「でも、目的地も遠いですが…

各村や街へ入るには、旅券の提示が必要なのですよ!

この村でもそうですが、旅券の無い者は大概犯罪者まがいと疑われちゃいます!」

 

村の少女が気の毒そうに眉を下げる。

 

「…そうか。

パスポートみたいなものか。」

 

事前に偽造しておけば良かったか…

いや、いざとなったら潜入を試みるか。

 

少し考えを巡らせていたルピナスに村の少女は、意を決したように顔を上げルピナスを見つめた。

 

「私が旅の方と一緒に同行しましょうか?」

 

凛とした、良く通る声で少女は言い放った。

同時に自警団団長家に集まっていた村人衆が凍り付く。

 

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「リーサ…お前…またなんと言う事を言う⁈」

 

熊のようにガタイの良い自警団団長が静かに怒りのオーラを燃やす。

 

 

(25話へ続く)