【KADODE】108話「こっちからリーサの声が聞こえる…」
第108話
「こっちだ。
こっちから、リーサの声が聞こえる…」
抑揚の無い静かなルピナスの声が、リージの耳に届くと同時に
リージは頭で考えるより先に足が動いていた。
様々な事が重なり震え、力を宿さなくなった足を、無理矢理叱咤し動かせる。
ルピナスの指差す方向…
恐らく100メートルにも満たない距離の、大きな木の虚だろう。
途中何度も足がもつれ、躓くが
リージは這うようにして目指す。
木の虚の中が見え、人の姿が確認できる距離まで来た。
残りほんの数メートルなのに…永遠のように長く感じる。
リージは叫ぶ。リーサの名前を。
喉は糊を付けたかのように貼り付き、舌は震え上手く動かせなかったが…
数年来、出すことは無かったろう大声を…
懸命に振り絞って叫ぶ。
「リーサ…!!」
(109話へ続く)