【KADODE】107話 「なんで…何で…」
第107話
「なんで…何で…」
リージの震える唇は、そう紡ぐばかりだった。
父は愛用の大斧を握り締めたまま絶えていた。
帰宅したリーサから返却されたのだろう。
では、リーサはどこに?
村の近くで、リージを救援へ向かわせて
自らは村へ行ってしまった。
探すのが怖かった。
つい、十数時間前まで共に街まで出かけた…
元気だけが取り柄の双子の片割れ…
そんな片割れの変わり果てた姿なんて見たくなかった。
全てから目を逸らしたくなっていた時…
「…こっちだ…」
抑揚の無い、静かな声が聞こえた。
実際、ルピナスには人間の感情に共感する機能は無く…
嘆くリージを見て、仄かに胸の奥に細波を感じるだけだった。
その細波の意味を…知りたいと願いつつ
そっと指を指す。
「こっちだ。…声がする。
…リーサの声だ。」
(108話へ続く)