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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】93話 咽び泣く背中へ触れる気配にリージは気付いた…

第93話

 

咽び泣く背中へ…

ふと、優しく触れる気配にリージは気付いた。

 

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ルピナスさん…」

 

「…先ずは、ワイバーンを倒すぞ。」

 

「…はい。僕は何をすれば…?」

 

「自分がワイバーンと戦闘している間、救出可能な村人がいないか、探してみてくれ。

…ただし、この入り口付近に居ろ。」

 

「…ルピナスさん…ワイバーンを倒そう…なんて、考えてますか?

 

…流石に僕らだけでは…」

 

そうなのだ。

数日前、ベテランの冒険者達がワイバーンを捕獲しているのを目撃したが…

ベテランの冒険者でさえ、5人のパーティを組んで戦略的に行動していた。

 

…そうで無ければ、倒す又は捕獲などできないからだ。

 

…ましてや、ワイバーンは一匹では無いのだ。

 

「三匹か…」

 

 

 

(94話へ続く)

【KADODE】92話 僕の故郷の村は…

第92話

 

僕の故郷の村はなだらかな小高い丘の上にあった。

 

明るい森林に囲まれていて、村人は猟をしたり、薪を作って生計を立てていた。

 

さほど豊かでは無かったけれど…

村の外れの小ぶりな畑とか、果樹園とか…

自給自足は十分にできていて、

僕らは皆、充実していた。

 

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けれど、今は…

 

身体中燻されるのでは無いかと思う程の、高温の黒煙…

目を僅かに開けて見れば…

 

明るい緑にさざ波の様に覆われていた、静かな村は…

 

激しい炎と悪魔の様に蠢く黒煙に埋め尽くされていた。

 

「…全滅…だ…

村中…何も…何も残って無い…」

 

抑え無ければならないのに…

つい、震える唇が言葉を紡いでしまった。

 

必死に踏ん張っていた気持ちが決壊すれば、

涙が止めどなく溢れてくる。

手で口を抑え、必死に嗚咽を堪えるのが精一杯だった。

 

 

(93話へ続く)

 

 

【KADODE】91話 「行くぞ。村に着いたら戦闘になる…」

第91話

 

「…とにかく向かってみるぞ。

村に着いたら戦闘になる。

動けそうか?」

 

黒煙や炎にも動揺した感の無いルピナスが冷静に言葉を発する。

 

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「…大丈夫です!

…僕は戦闘には向かないけれど…

生存している村人の救出を優先したい…」

 

果たして…どれくらいの人数が生き残っているのか…?

リージは村にいる両親や兄の事が頭に過ぎり、必死に思考を中断させる。

 

今…家族の事を考えてしまったら…

村へ救出に1人で向かってしまったリーサの事を考えてしまったら…

絶対に冷静でいられない…!

 

逸る気持ちを、震える手先を抑え…

自分に出来る事だけを考える。

 

決して小さくは無いリージ達故郷がある丘を、数歩で飛び上がり到着した超人的な身体能力を持つルピナスを、

目を閉じて己に喝を入れていたリージは知らない。

 

 

(92話へ続く)

【KADODE】90話 走っていたルピナスの足がふいに…

第90話

 

走っていたルピナスの足がふいに止まった僅かな振動で、リージは目覚めた。

 

「え…、あ…ここは?ルピナスさん…?」

 

リージの問いに、息を飲む気配で返事をしてるようだった。

 

リージが背負われている、ルピナスの肩越しから前を向くと…

小高い丘の頂上付近から大量の黒煙と真っ赤な炎が見えた。

 

まだ夜明け前にもかかわらず、その黒煙は夜の闇より暗く…

そして炎は血の色のように燃えていた。

 

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「…そんな…

僕が最初に見かけた時よりも炎の勢いが激しい…」

 

ルピナスと合流し、少しだけ落ち着きを取り戻していたリージだったが…

再び動揺が走る。

 

見る間に指先は震えだし、唇は言葉を紡げなくなる。

 

…いや、口走ってはいけない…

 

…もう、手遅れだった…なんて

口走っては…

 

 

(91話へ続く)

【KADODE】89話「僕だって…戦うんだ…!」

第89話

 

「僕だって戦うんだ!」

 

…とはいえ、僕には戦闘能力は無い…

以前村に数日滞在していた術士の教えと、本で得た拙い白魔術しか…取り柄は無い。

 

白魔術…と言っても、初歩中の初歩だ。

初歩の回復術と軽い状態異常を治す程度の力量…

 

消え入りたくなる自分の非力さ…

 

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けれど、今、自分が持てる全てをもって皆の為に頑張らないと!

少しでも、ルピナスさんの助けになれれば…!

 

数匹のワイパーン全てを倒す事は…

さすがのルピナスさんとて無理だろう。

 

とにかく…皆をできる限り救出して…

ワイパーンから逃げのびて…

 

それから…

都市まで逃げて討伐依頼を…

 

懸命に気を張っていたリージだったが、夜通し走り通した疲労が限界に達していた。

 

「少しだけでも休んでおけ…」

 

静かなルピナスの声が微かに耳に届いた。

 

 

(90話へ続く)

【KADODE】88話 「急ぐぞ。しっかり捕まっておけ」

第88話

 

「急ぐぞ。リージ、しっかり捕まっておけ」

 

ルピナスの走るスピードが更に加速した。

 

リージは不本意ながらも、振り落とされないよう、ルピナスの背中にしがみ付く。

 

カドデは…

初めは懸命に自力で走っていたが、今はルピナスが見兼ねて小脇に抱え込んでいる。

 

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2人を抱えても尚、衰えずスピードを上げて走るルピナスを感じながらも…

リージは少し不安に駆られていた。

 

あんな何匹ものワイパーンがいると言うのに…

ルピナスさんただ1人で…どうすると言うんだ…

 

助けを求めていながら不遜な思考だと自己嫌悪しながらも不安は膨れる。

 

生き残っている皆を救出して…

それから…

 

でも…

もし、ワイパーンに気付かれたら?

戦闘になってしまったら…?

 

勝てるのだろうか?

 

リージはキツく目を閉じ不安を搔き消す。

ルピナスさんはサイクロプスも倒した強者だ!

きっと切り抜けられる!

…僕だって…

命を張って戦うんだ!

 

 

(89話へ続く)

【KADODE】87話 「黒煙を上げる村の上空に…何匹ものワイパーンが…」

第87話

 

「黒煙を上げる村の上空に…何匹ものワイパーンが飛んでいたんです…」

 

リージの声が苦しくそうに発せられる。

 

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つい、数日前…ベテラン冒険者の一党がワイパーンを捕らえていた様子を思い出す。

 

怪物退治に精通した強者らが、数人がかりで協力し、やっと一匹を捕らえていた。

 

…それ程までにワイパーンは…怪物とは圧倒的な力を持った存在なのだ。

 

それが数匹…群れて村を襲ったとなれば…

 

村の状況は…かなり厳しいものだろう…

 

「リーサは…なぜ一緒に来なかった?」

 

「…く…」

 

リージの歯を食いしばる気配がする。

 

「まだ…村に生存者がいるかもしれない…って…皆を助けるのだと…」

 

リージの言葉の語尾が鼻声に変わる。

 

「僕が止めるのも聞かずに駆け出して行ったんだ!」

 

リーサらしい…

冷静に考えれば、助けを呼びに行ったほうが賢明だろうに。

一刻も早く大事な故郷の人達を助けたかったのだろう…

 

「急いで向かおう。リージの行動も、リーサの想いも…無駄にしない為に…!」

 

 

(88話へ続く)