【KADODE】103話 「人間だ。人間の声がする…」
第103話
「人間だ。人間の声がする…」
突拍子も無いセリフだが…
リージにとっては、こんな嬉しい言葉は無かった。
「本当ですか⁈
この村の生き残り…⁈
声は何人ですか?」
堰を切ったように捲し立てるリージとは反対に
あくまで冷静な声でルピナスは応じる。
「…1人だ…少し…苦しそうに聞こえるな。」
リージはどんなに耳を澄ましても…声は聞こえない。
先の戦闘にしろ、聴力にしろ…
ルピナスの超常的な能力に、今は疑問を抱いている余裕はリージには無かった。
…生き残りは…たった1人…
それでも…
故郷の誰かは生きていてくれてる…
自分が今迄生きてきた中の親しいもの全てが失われたと絶望していたリージに
仄かに希望が灯る。
「急いで助けましょう…!」
気持ちが急く。
膝の震えが煩わしいリージだった。
(104話へ続く)