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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】71話 「ん〜〜!美味しい!」

第71話

 

「ん〜〜!!美味しい!!」

 

リーサが唸りながら顔をくしゃくしゃにする。

 

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「この、南方野菜…食感がプチプチするよ!

果実のドレッシングも甘酸っぱくて合う!」

 

「鴨肉も柔らかいね。まるで…本で読んだ宮廷料理みたいだ…」

 

リーサとリージが感動で騒いでいる。

ルピナスも料理を食べる。

「美味しい」と、感想を述べるには味覚への心の豊かさがまだ足りていない…

ただ、色々な味が口から押し寄せる事象だけは興味深かった。

 

「…、、ふわぁ…食べた食べたぁ〜!あっというまだったよ」

 

「リーサ、ガツガツ食べ過ぎだろ?」

 

「いいじゃない!ちゃんと美味しく食べたんだから」

 

何はともあれ、2人共満足しているようだ。

 

「さぁ…街の良い思い出も出来たし!

帰ろうか…」

 

随分と名残惜しげだが、リーサが気持ちを切り替えて言う。

 

「財布もすっかり空になったしね。」

 

「リージこそ、やり残した事無いの?

買いたがってた本は買えた?」

 

「ああ、ちゃんと買ったよ。

…まぁ…いつか、もう一度この街来た時は…

ゆっくり1日かけて街立図書館行きたいけどね」

 

「ふふっ、リージらしい!」

 

料理の代金を支払い、酒場を出る…

 

 

(72話へ続く)

【KADODE】70話 「うわぁ〜!これが都会のご飯かぁぁ」

第70話

 

「うわぁ〜!これが都会のご飯かぁぁ」

 

給仕が運んできた何品かの料理にリーサは目を輝かせた。

 

「り、リーサ!恥ずかしい…」

 

リージは、そんなリーサの田舎者丸出しの発言に頬を染めるが、リーサは感動を隠そうとしない。

 

鴨肉の薄切りロース、南方野菜の果実ドレッシング和え、ライ麦パンのポークサンド、トマトとナスの三種チーズグラタン…

 

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故郷の村では食べた事も見た事も無い料理の数々だ。

小さな農地と、木こりをして細々と生計を立てている貧しい村では、毎日が質素倹約だ。

 

「村じゃ…野菜の塩味スープと固いパンくらいしか出ないよね…

こんな彩りのある食べ物があるんだ…」

 

口をぽかんと開けるリーサ。

本当なら、ツッコミを入れたいリージだが…

自らも、感動を抑えられずひと事ではなかった。

 

ルピナスは…料理自体には感慨は無い。

料理など、自分が食べる物では無いと…数百年来の認識だった為…今でも他人事な印象だ。

その横では、同じく食べる事が出来ないカドデだったが、羨ましそうに涎を流していた。

 

「と、とにかく食べてみよう。

食事マナーは…、、冒険者酒場だし余り気にしなくて良さそうだね」

 

「ほらほら!ブツブツ言ってないで、リージ小皿に分けるよ〜!

ルピナスさん、はい!いっぱい食べてね!」

 

普段ルーズなリーサだったが…早く料理食べたさに、珍しくテキパキと皆の分の料理を小皿に分け与える。

 

 

(71話へ続く)

【KADODE】69話 「ありがとうこざいます、ルピナスさん」

第69話

 

「感謝します、ルピナスさん。

リーサと2人では少々野宿時の戦力に不安があったので…」

 

遠慮がちなリージのセリフと、満面の笑顔の反比例にリーサはクスリと笑う。

 

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別れが数時間先延ばしになっただけ、だったが…

それでもルピナスとの思い出が増えることに変わりは無い。

 

「あぁ〜泣いたら、お腹空いちゃった!

ねぇ、夕飯ちょっと早いけどここで食べてかない?」

 

「…そうだね、予算…なんまり無いけど

早めに夕飯食べて、早めに街門出ようか?」

 

帰りの道のりが気重だったはずの2人だが、今は笑顔に変わっている。

 

「やったぁ♫私、お店でご飯食べるなんて初めて!な、何頼もうか⁈」

 

2人が急に笑顔になったのをキョロキョロ見ながらカドデも一緒に笑顔になる。

リーサとリージがいそいそとメニュー表を見ているのを行ったり来たりカドデも飛び跳ねながら覗き見る。

 

ルピナスさんは何がいい?」

 

「自分は何でもいい。」

 

「リーサ、余り高いのはダメだぞ?」

 

2人は財布の残高を数えながらも、目一杯注文した。

 

 

 

(70話へ続く)

【KADODE】68話 ルピナスの感情はまだまだ靄がかかっているように…

第68話

 

ルピナスの感情はまだまだ靄がかかっているように鈍く、緩慢だ。

喜びや悲しみも…明確に心へ繋がらない。

それでも、ほんの数日…皆と行動を共にして

ルピナスとしては、劇的に自身の変化があったように思う。

 

命令や指示では無い、他愛無い会話が…

氷付いたような、ルピナスの心をほんの少しだけでも溶かしていたのだ。

 

ルピナスとて、この2人との別れは名残惜しかった。

 

そして…

 

「びえぇぇぇん〜」

 

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横から、子供の大泣きが聞こえてきた。

 

「リーサちゃんと、リージ君…お別れ嫌だよう〜」

 

泣き噦っているのはカドデだ。

皆の会話を聞いて事態を把握したのだろう。

勿論、どんかにカドデが騒いでも周囲は聞こえないが…

 

「いや、彼らとの別れはもう少し後だ。

さすがに夕刻になる。

子供2人だけで野宿はさせられない…」

 

「…え…?」

 

カドデに聞こえるくらいの囁きだったが、

リーサの耳には聞こえてしまった。

 

ルピナスさん、途中まで付いて来てくれるの⁈」

 

「ああ、明日…夜が明けるまでな」

 

リーサの目に再び涙が溢れた。

顔をくしゃくしゃに笑顔にして。

 

 

(69話へ続く)

【KADODE】67話「ルピナスさんとお別れ…」

第67話

 

「うぅ…ルピナスさんとお別れ…悲しいよう」

 

先程まで酒場のミルクにはしゃいでいたリーサは、涙で顔をくしゃくしゃにしていた。

 

「リーサ、仕方ないだろ?

ルピナスさんにだって色々事情もあるんだし。

…僕らだって、少しだけ街の見学するって条件で村から出て来たんだから」

 

リージは淡々と諭しながらも、自身にも言い聞かせるように語る。

 

「…分かってる。

父さんや母さんだって心配してるんだから、村に帰らなきゃなのは…」

 

鼻をすすり、お下げ髪もすっかりしおしおになっているリーサ。

 

「村に帰りたく無い訳じゃないの…

…でも、ルピナスさんとは…もう会えなくなるんじゃなかなって…」

 

再び涙を溜めるリーサ。

 

「それは…

…でも、二度と会えない訳じゃないさ!

僕らが成人して、いつかこの街で再会を約束すればいいじゃないか!」

 

声が震えないよう、必死に気を張っているリージをリーサは知っている。

 

「…ルピナスさん…また…会える?」

 

目を潤ませて、ルピナスを見上げるリーサは、まるで仔犬のようだ。

 

だが…

 

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リーサの願いにルピナスは返事をすることができない。

…その事がルピナスの胸ね辺りにまた、感情と呼べるような痛みをもたらす。

 

「…また必ず会えるかは…分からない。

…だが、お前達2人の事はずっと見守っていこう」

 

言葉通りずっと…幾年月もだ。

 

 

(68話へ続く)

【KADODE】66話 日が傾く前には…

第66話

 

日が傾く前には、ルピナスと別れて村へ帰還しなくてはならないのだ。

 

まさに…

この酒場を出たら、そこで…。

 

大都市見学にうわついていた気持ちから、急に現実に戻された気分になった。

 

リーサの手に包まれているカップの中のミルクは半分になっていた。

これを飲み干したら…ルピナスさんとサヨナラ…

 

「ミルク…もう一杯お代わりしようかな?」

 

小さく囁いた言葉にリージは

 

「二杯も飲んだら腹下すぞ?」

 

相変わらず、真面目なツッコミを入れるが…

リージ自身も心なしか寂しそうだ。

 

「う、うぅ…」

 

ついに、リーサは堪え切れず目に涙を溜める。

 

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それにいち早く気付いたのは、店内をぶらぶらしていたカドデだった。

 

「あ!!リーサちゃん!リーサちゃんが泣いてるよ!

どうしよう⁈どうしよう〜!お腹痛いのかな?」

 

カドデが大騒ぎし、ルピナスがそれに気付く。

勿論、カドデがどんなに騒いでも周囲は知る術も無いが…

 

「リーサ、どうした?」

 

ルピナスが淡々とした口調ながら、他者の様子を聞くのは非常に珍しい事だ。

 

「うぅ…だって…ルピナスさんとサヨナラだから…」

 

大きな目いっぱいに、並々と溜められていた涙はついに溢れ、頬に雫が落ちる。

 

 

(67話へ続く)

 

【KADODE】65話 琥珀色の飲み物を凝視して…

第65話

 

その琥珀色の美しい飲み物を凝視して固まっているルピナス

 

リーサはいたたまれず、ルピナスに声を掛ける。

 

ルピナスさん?

…どうしたの?このお酒、やっぱり美味しく無い?」

 

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グラスに付いた水滴が木製のテーブルに滴り落ちる。

ややあって、ルピナスはやっとリーサの問いに答える。

 

「いや…少し考え事をしていた。」

 

そこへ、同じく気に掛けていたリージも声を掛ける。

 

「今後の事…ですね。

やはり、この都市では…ルピナスさんの求める情報は手に入りませんでしたか…」

 

「いや。多少は手答えはあった。

…しかし、やはり王都へ行かなければならない」

 

そんなルピナスの発言に、リーサはその明るい顔を僅かに曇らせる。

 

ルピナスさん…やっぱり行っちゃうの?」

 

ルピナスは王都へ。

そして、自分らは程なく村へ帰還。

 

出会ってから、1週間に満たない間柄ではあったが、リーサはルピナスに相当懐いていた。

 

冒険とは全くほど遠い、小さな旅だった。

旅人や商人から言わせれば、「おつかい」程度だ。

 

それでも、初めて村を出ての遠出。

産まれて初めての大都市…

 

リーサにとって(恐らく、口には出さないがリージにとっても)この旅は一生の記憶に残るだろう。

 

「大人になって、数年して…

自由に外へ出られる時が来たら…

またルピナスさんと会えるのかな…?」

 

 

(66話へ続く)