【KADODE】44話 冒険者との昼食も終わり…
第44話
冒険者との昼食も終わり、片付けをしている時だった。
さほど大きくはないが、竜の咆哮が聞こえた。
「え?え⁈ 何⁈」
リーサが慌てて武器を握りしめる。
「あぁ…脅かしてごめんなさいね…
先程倒したワイバーンよ。
魔法を施した鎖で覆っているから、無害よ!」
「え…?ワイバーンはまだ生きてるんですか?
…その…トドメは…」
冒険者は複雑そうな顔をして肩を竦める。
「これがギルド本部からの義務だからなのよ。
依頼した怪物退治は、生きたまま捕獲せよ。
って。」
「へぇ〜!動物愛護⁈
…じゃ、無いですよね?どういう意図なんだろ…」
「その辺の説明はギルドからは無いわね。
もし、失敗して死なせてしまうと報酬は10分の1くらいになってしまうの…」
「これは手厳しい…」
「リージ君もそう思うわよね⁈
…ギルド運営部まで連れて行くのも一苦労よ!
…噂では…回収した怪物を更に王都まで輸送するそうよ」
「王都へ輸送…?
どういう事だ?」
迫力がある訳では無いが、澄んだ低い声に冒険者の美女は少し驚きながらも応答する。
「冒険者同士の単なる噂の域よ?
…ギルド運営は国王の配下にあって、
その国王が…退治した怪物を回収している…
だなんて囁かれているの。
…勿論、根拠がある噂では無いわよ?」
(45話へ続く)
【KADODE】43話 ワイバーンを倒した冒険者の話しを…
第43話
いつの頃からか、怪物と呼ばれる生き物が世界に蔓延していき、その対応として冒険者と呼ばれる怪物退治専門のギルドが形成されていったという。
主に四大都市にギルドの運営部がそれぞれ設置されており、
そこで怪物の目撃情報や、退治依頼また、冒険者の募集もしているという。
「ぼ、冒険者の募集…」
リーサは目を輝かせた。
そわそわするリーサに冒険弓手の美人は
「誰でも冒険者になれる訳では無いのよ?
当然、身元確認と戦士としての実力が必須となるわ」
と、優しい眼差しながら毅然と言う。
「リーサの場合は更に父さんを説得しなければならないという難関も付いてるな!」
リージがやはりトドメを刺す。
「わ、分かってるわよ!
今は無理って事くらい…でも、こうして現役の冒険者さんに話し聞いたり、ギルド見学したりするくらいはいいでしょ?
…自分の将来は自分で決めたいのよ。
その為に色々な事を知りたいの!」
「素敵な事よ、リーサちゃん。
未来は無限に広がっているわ…
自分に嘘なく生きるって大変な事だけど…
きっと素晴らしい生き方よ!
…ただし、周囲に心配させ過ぎないようにね?」
リーサは目を潤ませる。
周囲に反対されまくり、自分の未来は閉ざされた気分だったのだ…
ほんの少しだけ、背中を押してくれた言葉に
リーサは自分の未来に光を感じた。
(44話へ続く)
【KADODE】42話 リーサが飛び跳ねるように走って行き…
第42話
リーサが飛び跳ねるように走って行き、その後をリージが早足に追って行く。
万一、冒険者が臨戦態勢に入るようなら、即リーサ達の加勢に行けるよう武器を構えるが…
少しして、リーサが手を振って呼ぶ。
いつの間にかカドデもリーサの側にいて、ピョンピョン跳ねている。
「ルピナスさん、この方達気さくなの!」
焚き火を囲み、共に昼食を取る。
「リーサちゃん達をなぜ警戒しなかったって?
…そりゃ…こんな初々しい無垢な子が同業者とは思えないわ。
戦闘経験も無さそうだし?」
弓手のスレンダー美女はそう言って口角を上げる。
リーサが無言で軽く肩を落とす姿を見て…
「リーサとこのお姉さんとは見た目からして、月とスッポンくらいの差だな」
リージがトドメを刺す。
「ふふふ…イジメちゃ駄目よ。
リーサちゃんはこれから成長するんだから!
…そこの長身の方…ルピナスさん?
は、ちょっと妖しい未知の強さを感じるけどね?」
「ルピナスさんは、怪物の事を調べてるそうなんです。僕らも知り合って間もないのですが、
アクトスまで共に行って情報を集めようと…」
「怪物の事…ねぇ
私達も冒険者歴は数年程度だけど…
分かる事なら提供するわよ」
(43話へ続く)
【KADODE】41話 「もぅいいよ!私だってもっと修行すれば…」
第41話
「もぅいいよ!私だってもっと修行すれば少しは強くなるんだから!」
「修行…?父さんが聞いたらまた怒るぞ?」
「リージはどっちの味方なのよ!」
「どっちの味方でも無い。僕は無事にリーサを村へ連れて帰ると両親と約束しただけ」
「〜〜!リージなんて嫌い〜!」
また姉弟喧嘩が始まった。
カドデも一緒になって姉弟の周りをグルグル回っている。
一方、ルピナスはワイバーンを倒した冒険者らに注目がいっていた。
「あの冒険者らと少し話しが出来ないだろうか?
怪物の事について、何か…新しい情報が欲しい」
姉弟の喧騒とは対照的に冷静な声を発すれば、2人もまた我に返る。
「わぁ♫うんうん!私も冒険者さん達とお話したい!」
「…ですが、怪物を狩った後の彼らは、恐らく同業者の横取りを警戒しています。
無防備に接近するのは危険かと…」
「なら、先ずは自分が先行して近付こうか?」
「ルピナスさんは…その…
見るからに戦士っぽぃというか…
眼つきが怖…じゃなくて鋭いから警戒されちゃうかも⁈
やぱ、私が行くのが一番よ♫」
「リーサだけじゃ、何かあった時に心配だな。
仕方ない、僕も一緒に行く」
「先行ってるよ〜!ルピナスさん、相手が話ししてくれそうなら、呼ぶからね♫」
「待てリーサ!いきなり走って行って弓矢に射られたらどうする?」
(42話へ続く)
【KADODE】40話 冒険者パーティの陣形の周囲には…
第40話
ワイバーンに対する冒険者パーティの陣形の周囲には、薄っすらとドーム状に輝く光が見えた。
陣形の中央に居る神官装束に身を包んだ人影は、杖を抱き、祈りを捧げているようだ。
弓手が数度矢を放ち、見事、翼の付け根に命中させ、ワイバーンは体制を崩す。
高度を下げたワイバーンにすかさず、剣士が自慢の大剣を振り下ろす。
「うわぁ!うわぁ!勝負ありだ〜!!
カッコ良い!」
「見事な連携だね、どうやら出会ったのは熟練の冒険者らしい」
「え〜?…熟練じゃない冒険者は…
どうなるの?」
「…下手すると、そもそも弓手をパーティに入れてない。
故に空中の敵への攻撃手段が無い。
…攻撃系魔法を沢山使える人物がいればまた違うが…
ひよっこ魔法使いでは、竜系の高い魔法防御で致命を与えられない」
「うぅぅ…
ひょっとして…私達が今、ワイバーンに襲われてたら…だいぶピンチだった?」
「大ピンチだな。
弓手も魔法使いも居ない、せいぜい僕のシールドくらい、地上戦なら…ルピナスさんが戦力になってくれるだろうが…
リーサは戦力外だしな?」
「あ、あ、酷い!私だって父さん直伝の斧があるんだから!」
「……
…、、サイクロプスに全く歯が立たずに泣いて逃げて来たくせに…」
「〜〜〜!!」
リーサは顔を真っ赤にしながらも言い返せないらしい。
(41話へ続く)
【KADODE】39話 「それだけじゃない、魔法使いの援護も入るぞ」
第39話
「それだけじゃない、魔法使いの援護も入るぞ!」
リージが、ルピナスにとって聞き慣れないワードを言った。
…魔法使い?
言葉自体は知っている。
しかし…現実世界では、それは…
架空の能力ではないか?
夢想世界なのだから、何でも有りではあるのだが…
そこは主システムのカドデが極力現実世界に似た環境にしていた筈だが…
…ここでもまた、バグの影響なのか?
「カドデ?この世界では魔法など使える仕様なのか?」
2人には聞こえないよう、カドデに問う。
リーサと一緒になって頬を染めて騒いでいたカドデが我に返る。
「あ…ぅ?
んと、最初のプログラムでは…許可申請があったみたいだけど…攻撃転用される危険もあるから、没になった筈だけどなぁ?
…アジアに伝わる、気功って回復技は採用されてるみたいだけど…
…う〜ん…カドデよく分からない…」
何かのバグで不採用予定だった魔法なるものが突如実用流用されたのか…?
「あ!リージの当たりだ!
魔法使いが風の魔法使った!」
「ワイバーンの翼からの風を相殺して、弓矢の命中と威力を上げるのだろう。
リーサ、更にそれだけじゃないぞ。
地上のパーティには既に神官が唱えた防御シールドが張られている」
(40話へ続く)
【KADODE】38話 激しく翼を動かし威嚇するワイバーン…
第38話
激しく翼を動かし威嚇するワイバーンの下には確かに人影があった。
しかも、1人ではない。
3〜4人ほどの人間が陣形を組んでいるようだ。
「も、ももももしかして…」
リーサが頬を上気させ非常に興奮しながら声を上げる。
「ワイバーンの下にいる人達って…
冒険者のパーティかも⁈⁈⁈」
「冒険者?リーサ、それは確かか?」
「わ、分かんないけど…
ワイバーンに応戦しようとしてる感じ」
「…冒険者?
戦闘集団か何かか?」
「ルピナスさん、怪物専門のハンターですよ。
確かに戦闘能力はかなり高い筈です」
「では、ここで様子見がいいな」
専門のハンターで対応できるのなら、無用の戦闘は避けるべきだ。
「うわぁ…ドキドキする〜
飛んでるワイバーンにどう攻撃するんだろ⁈」
ワイバーンや、冒険者に気付かれない程度の距離を保ちつつ、茂みから様子見する。
「飛行系の相手に対しては…大凡決まってるだろ?」
視力のやや弱いリージはちゃっかりと携帯望遠鏡を取り出して覗いている。
「あ、あ!本当…弓手が攻撃始めた!」
「それだけじゃない、魔法使いの援護も入るぞ!」
(39話へ続く)